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瀧津 孝さんの「司馬遼太郎おすすめ作品ランキング」

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更新日: 2020/10/14
瀧津 孝

作家・日本史激動期研究家

瀧津 孝

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まえがき

日本の歴史を題材に執筆することの多い私から見れば憧れであり、雲の上の存在でもあるのが作家・司馬遼太郎氏。彼は長編小説、短編小説、随筆、紀行文、戯曲など数多くの名作を世に遺しましたが、私が最も熱心に読み込んだのはご多分に漏れず歴史小説でした。中でも、私の人生と仕事に大きな影響を及ぼした三作品がこれです!

ランキング結果

1花神

花神

引用元: Amazon

著者司馬遼太郎
ジャンル歴史フィクション
出版社新潮社
発売日1972年
メディアミックス-
公式サイト-

幕末のドラスティックな面白さに開眼

幕末という時代がいかにドラスティックで〝化学変化〟に富む激動期だったか、いかに飛び抜けて個性的な人物を次々と生み出す革命期であったかを教え、開眼させてくれたのがこの作品です。

当時の日本は、アジアの植民地化を進める西欧列強と対峙するため、最新の兵器とその運用を軸にした戦術を早急に学ばなければならず、鎖国下で唯一流通するオランダ語の軍学書から知識を得る必要がありましたが、武士の中に読める者はいません。主人公の大村益次郎は元々一介の村医者でありながら、蘭方医学を修めてオランダ語に堪能だったことから軍学書の翻訳を依頼され、その仕事を通じて西欧の軍隊が採用する戦術・戦略の知識を習得し、この分野のエキスパートとして倒幕軍の総司令官にまでなってしまう。

人間万事塞翁が馬。人生何が縁になってどんな幸不幸が転がり込んでくるかわかりません。目先の失敗やトラブルに一々くよくよする必要はないんだと、この作品はまだ結果を出せずに迷い、あがいていた自分を奮い立たせてもくれました。益次郎と同時期に、同じ長州で活躍した高杉晋作の描かれ方があまりにもカッコイイ「世に棲む日日」と併せて読まれることをお奨めします。

2国盗り物語(小説)

国盗り物語(小説)

引用元: Amazon

著者司馬遼太郎
ジャンル歴史フィクション
出版社新潮社
発売日1966年
メディアミックスNHK大河ドラマ「国盗り物語」(1973年)
公式サイト-

戦国ファンになるきっかけとなった作品

江戸川乱歩の「少年探偵団」シリーズやコナン・ドイルの「シャーロック・ホームズ」シリーズに熱中していた小学生の頃、漫画ということでふと興味を持って読んだ「学研まんが戦国歴史シリーズ」全五巻から、私の人生が方向付けられました。

それは当時放送されていたNHK大河ドラマ「国盗り物語」の筋に沿い、斎藤道三から織田信長、豊臣秀吉、徳川家康へと続く武将たちの天下平定への道のりがわかりやすく描かれ、戦国時代への関心が急速に高まります。途中から観た大河ドラマも非常に面白く、さらに司馬遼太郎氏の原作小説へと行き着きました。当初、歴史小説には小難しくて、大人の読む本というイメージを持っていたのですが、司馬氏の文体は新聞記者出身ということもあってか小学生にも理解でき、ハラハラドキドキしながら読み進み、知識欲が大いに満たされ、他の作品を読みあさる契機になります。

「国盗り物語」前半の主人公・斎藤道三は最近発見された様々な資料から、一人で美濃(岐阜県南部)を奪取したのではなく、親子二代による国盗りだったらしいことが明らかになりました。司馬氏にはもう少し長生きして、こられの新資料を元にした改訂版を書いてもらいたかったものです。

3城塞

城塞

引用元: Amazon

著者司馬遼太郎
ジャンル歴史フィクション
出版社新潮社
発売日1971年
メディアミックス-
公式サイト-

〝滅びの美学〟に魅せられて

戦国時代を通じて最も好きな戦いが大坂の陣(大坂冬の陣・夏の陣)です。この時代のフィナーレを飾る決勝戦であり、特に夏の陣は局所的な野戦としては両軍合わせて二十二万と、関ヶ原の戦いを上回る戦国最大の合戦でもありましたが、私が特に魅せられるのは劣勢の豊臣方に与し、絶望的な戦闘に身を投じて散った真田幸村、後藤又兵衛、毛利勝永、木村重成、塙団右衛門ら勇将たちの〝滅びの美学〟です。

似通った国外の歴史的出来事に、テキサス独立戦争でアラモ砦に立て籠ってメキシコの大軍と戦い、全滅したアメリカの国民的ヒーロー、デイヴィッド・クロケットやジェームズ・ボウイら義勇軍の物語があり、何度も映画化やドラマ化されて米国民の共感を呼んでいます。「城塞」でも、大義のためには命を捨てても戦い抜く武将たちの華々しくも哀しい姿が克明に、躍動感を持って描かれ、読む人の心を打つのです。

私は生まれも育ちも京都市内。同じ関西とはいえ大阪人と京都人では文化や習慣もやや異なり、どことなく反目し合っているようなところもあるのですが、この本を読むと大阪人の東京への負けん気や太閤(豊臣秀吉)びいきに自然とシンパシーを感じてしまいます。

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