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前田 有一さんの「元気が出る映画ランキング」

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更新日: 2020/10/19
前田 有一

映画批評家

前田 有一

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まえがき

「元気が出る」とはどんな映画だろう。

たとえば、主人公が大金を稼いだり、大成功したり、甲子園で勝利したのを見て元気が出るという人もいるだろう。

しかし私はあまりそういう映画を紹介する気にはなれない。だいたい人生、そんなにうまくいくはずがないし、映画的、非現実的な成功物語なんぞを楽しめるのは、すでに元気があるからに他ならない、そう思っているからだ。

「元気が出る」映画を求めているのは、今現在「元気がない」人。私はそう考える。

弱っている人に必要なのは、おかゆのように体の芯を温める物語である。では人の心を温めるものは何か。

私はそれを「共感」と考える。元気のないあなたが共感できる映画。元気のないあなたに共感してくれる映画。

それこそが、ここで紹介するにふさわしい映画といえるだろう。

ランキング結果

1ホームレス ニューヨークと寝た男

ホームレス ニューヨークと寝た男

引用元: Amazon

制作年2014年
上映時間83分
監督トーマス・ビルテンゾーン
メインキャストマーク・レイ
主題歌・挿入歌-
公式サイトhttp://homme-less.jp/

心揺さぶられる衝撃のドキュメンタリー

もしあなたがどんなに落ち込んでいたとしても、この記事を見ているからには、さすがにホームレスではないだろう。その意味で、このドキュメンタリー映画の主人公マーク・レイよりは、いくぶんマシな状況といえるかもしれない。

しかしこの映画は、そういう「自分より下を見て安心する」系のものではない。マークはホームレスでありながら、シャレオツなスーツに身を包み、モデルの仕事までやっている。

ショウビズ界でそれなりの知名度を持っていて、だから驚くことに周りの誰も彼がホームレスとは思ってもいない。

いったいぜんたいこれはどういうことか。

マークの衝撃的な日常と、なぜそんな状況に落ちぶれてしまったのか、そのなぞ解きを行うのは彼の旧知の友人でもある映画監督トーマス・ヴィルテンゾーン。友達ならではの密着ぶりで、文字通り余すところなく見せてゆく。この映画は、その窮状を知った監督がなんとか友人を救いたいとの思いで作り上げた作品でもある。

最後にマークのねぐらで行うインタビューシーンは、思い出しても未だに心を揺るがされる。この世界のおそるべき矛盾、人間社会の絶望的なまでの不完全さ。

くやしさと、怒りと、悲しみ。

そこまでの軽快でコミカルな流れが激流のようにシリアスに変貌する瞬間、きっとあなたの心も激しく動揺するに違いない。

だが、決してその後の気持ちはマイナスにはなるまい。元気が出るはずだ。なぜならこの映画の最後には、わずかながらに希望が残されていたからだ。興味を持ったら鑑賞後、後日談を検索してみてほしい。素晴らしい作品だ。おすすめする。

2サンシャイン・クリーニング

サンシャイン・クリーニング

引用元: Amazon

制作年2009年
上映時間91分
監督クリスティン・ジェフズ
メインキャストエイミー・アダムス(ローズ)、エミリー・ブラント(ノラ)、アラン・アーキン(ジョー)、ジェイソン・スペヴァック(オスカー)、スティーヴ・ザーン(マック)ほか
主題歌・挿入歌-
公式サイト-

珍しい女性向けルーザーズムービー

女性が落ちぶれると、シャレにならないほどつらいものがあるので女性のルーザーズムービーは作るのが難しいのだが、『サンシャイン・クリーニング』は相当よくできている。

かつてイケてた元美少女と、パラサイトシングルのダメ妹が一念発起して「特殊清掃業」を始めるという、ド底辺にもほどがある設定。

この姉妹も父親も、そろってダメ人間ばかりではあるのだが、それでも必死に生き、人生終了一歩手前なのに他人を思いやる温かい心を持っている。いじめられた子供を、彼らが必死に励ますシーン。その必死さは、そのまま愛の深さである。だからこそ、その言葉が心に届く。

映画オリジナル脚本なので筋運びに無理がなく、展開も早い。

非現実的なノー天気ハッピーエンドでないところも、現実の厳しさを知る観客にとっては共感できるところ。弱っているときに見るのにぴったりな映画。女性にもすすめられる。

3阪急電車 片道15分の奇跡

阪急電車 片道15分の奇跡

引用元: Amazon

制作年2011年
上映時間120分
監督三宅喜重
メインキャスト中谷美紀(高瀬翔子)、戸田恵梨香(森岡ミサ)、宮本信子(萩原時江)、南果歩(伊藤康江)、谷村美月(権田原美帆)、有村架純(門田悦子)、芦田愛菜(萩原亜美)、勝地涼(小坂圭一)ほか
主題歌・挿入歌ホーム / aiko
公式サイト-

人々を「元気にした」実績は恐らく世界一

いくつかのストーリーが同時進行し、後半に絡み合う群像劇。主な登場人物は男女8人だが、みな一人ぼっちで、誰一人勝ち組なんてヤツはいない。名もなき生活者たちだ。映画は阪急電鉄今津線に乗り合わせた、そんな彼らの物語を丁寧に紡いでゆく。

弱きものに寄り添う視点で描かれた、無力な人同士が助け合うまっとうな人間ドラマ。実はこれ、偶然にも東日本大震災直後に封切られ、多くの日本人を「元気づけた」映画だ。その意味で、この作品ほど「元気にしてくれる」映画はほかにないだろう。実績でいえば世界一だ。

今日まで生きててよかった、報われたと感じさせてくれる良作。私は本作を、苦労を知る大人たちにこそ見てほしい。「この大変な時代に生きる弱き人々よ、無力感にさいなまれる事なかれ。君たちの生き方は決して間違っていない」とのメッセージを、心の奥に届けてくれるはずだ。

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