陣馬一体さんの「アニメ映画ランキング」

心に響く成長の旅

もっと説教臭い話かと思っていたが、良くも悪くもいつものジブリという感じだった。アニメーションのクオリティは高い。冒頭の火事のシーン、炎の描写と人の動きは、まるで主人公のトラウマそのものだった。眞人の深層心理の世界だと思われ、同時に彼の叫びでもある。物語後半、眞人が異界で“鳥たち”と対峙する場面は特に強烈に印象に残る。彼らは理屈や秩序を尊び、眞人に「正しさ」や「選択」を問いかける存在であり、人が成長するうえで直面する社会の理屈や他者からの期待を象徴しているようにも思えた。彼はその中で、自分の意志を確かめていく。叔母のキリコが「死んでる暇なんかないよ」と言うシーンは、物語全体のトーンを決定づける一言で、喪失の中にある眞人へ向け、生きることの力強さと厳しさ、そして現実に戻るための道しるべが込められていた。この映画は眞人の「心の成長」を丁寧に描いており、冒頭の火事から異界での出会い、最後の選択に至るまで、すべてが一つの旅としてつながっている。何度見ても、眞人の心の奥を新たに感じ取れる、非常に深い物語だ。