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2位東京島(小説)
引用元: Amazon
1945年から1950年にかけて、マリアナ諸島のアナタハン島で起きたアナタハン島事件をモチーフに創作された作品。『新潮』(新潮社)にて、2004年1月号から2007年11月号まで断続的に計15回連載され、2008年に刊行された。第44回谷崎潤一郎賞受賞作。
本能とは何か
無人島に31人の男、女はたった一人の自分。
一瞬聞こえは良いが、その男たちも俳優の様なイケメンでも何でもなく、自分の夫と見知らぬ日本人・中国人男性。
無人島で女が1人ということは、男たちの欲が溜まってきたらどういうことになるのか。
また、無人島で女が1人という価値の高さに気付いてしまったら女はどう豹変するのか。
日常生活から切り離された時の、人間の本能を見せつけられました。
救われない人間もいる
娼家で産み落とされ、親が誰かも分からないまま児童養護施設で育った主人公。
娼家では大人たちから汚いものとして扱われ、児童養護施設でも親が分からないことでいじめられ、ただただ凶悪な人間に育って行く。
さらに救われないのは、そんな主人公の周りに誰一人として善良な人が居なかったこと。
数々の悪事を働いて過ぎていく主人公の人生は救われず、読んでいて絶望感に包まれました。
今まで少し違う桐野作品
多くの作品は「性」「金」「欲」のようにドロドロとしたテーマが多い中、この作品は福祉制度が崩壊して渋谷の街で生活することになった少年の物語。
「こんな悲惨な社会になるわけない」と思いながら当時読んでいましたが、危機的な状況を迎えている2020年現在、ちょっとリアリティが出てきたなと感じています。
今までの生々しい作品とは少し違う、ちょっとだけ社会派な雰囲気の作品です。
スリルと生々しさ
平凡な主婦のが家庭内暴力に悩み夫を殺害してしまい、その死体をバラバラに切断し…という、実際にありえなくもない設定にまず引き込まれます。
殺人の事実を隠しながら仕事に行き、切断した死体を処理し、警察の目を恐れる…ドラマや映画にもなりましたが、これらの生々しい描写は活字で読むからこその面白さだと思います。