ハードボイルドを得意とし、人間の心理をリアルに描いた作品で人気を博す「桐野夏生」。直木賞をはじめさまざまな賞を多数獲得する彼女の作品にスポットをあて、今回はみんなの投票で「桐野夏生人気書籍ランキング」を決定します。真っ当ではない主婦たちの絶望ドラマを描き、日本のみならず海外でも人気を誇る作品『OUT(アウト)』をはじめ、1997年に実際に起こった事件を題材に書いた小説『グロテスク』(2003年)や、人間関係に悩む妻の不倫を描いた『ロンリネス』(2018年)など、多数出版されている作品から投票できます。あなたのおすすめも教えてください!
最終更新日: 2020/10/30
このお題は投票により総合ランキングが決定
1951年、石川県出身の「桐野夏生」。フリーライターを経て、1984年に『愛のゆくえ』で作家デビューを果たします。1993年、ミステリー小説第一作として発表した『顔に降りかかる雨』で第39回江戸川乱歩賞を受賞し、女流ハードボイルド作家として注目を集めました。また、1997年に発刊した『OUT(アウト)』では第51回日本推理作家協会賞を受賞し、直木賞にノミネートされるなど、高い評価を獲得し、本格的にブレイクを果たすきっかけとなりました。その後は、『グロテスク』(2003年)や『ハピネス』(2013年)、『ロンリネス』(2018年)など、人間の悪意や弱者の嫉妬、奥底に潜む狂気など、人間の心の闇を巧みに描いた数々の作品は高い人気を誇っています。
本ランキングにおける桐野夏生の書籍の投票範囲は、彼女が手がける作品です。エッセイやアンソロジーの作品にも投票が可能です。ただし、コミックの原作や海外の作品を翻訳した文学作品はランキング対象外となります。
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1位OUT(小説)
2位東京島
3位柔らかな頬
4位グロテスク(小説)
5位顔に降りかかる雨
1位OUT(小説)
2位東京島
3位柔らかな頬
4位グロテスク(小説)
5位顔に降りかかる雨
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神話の世界がまだ現実に残っている
当時映画化されてて興味を持って読みました。もともと古事記や日本書記の話に興味がありましたが神話の話が日本にもあるのだと意外に思ったのと、おおらかで野性的な男女の営みや感情が明るく書かれていて、桐野さんの小説の中では一番明るい内容だったと思います。
女の奪い合い。
現実にあった事件をモチーフとした物語。
無人島サバイバル的な要素と、バトルロワイヤル的な要素と、ハーレム的な要素と、どれもエンターテインメントとして魅力的な題材ですが、桐野夏生が興味を持つのはもちろんそういうところではなく。
主人公は島で唯一の40代の女性。
逞しい。
本能とは何か
無人島に31人の男、女はたった一人の自分。
一瞬聞こえは良いが、その男たちも俳優の様なイケメンでも何でもなく、自分の夫と見知らぬ日本人・中国人男性。
無人島で女が1人ということは、男たちの欲が溜まってきたらどういうことになるのか。
また、無人島で女が1人という価値の高さに気付いてしまったら女はどう豹変するのか。
日常生活から切り離された時の、人間の本能を見せつけられました。
映画化された作品
孤島に取り残された沢山の男たちと1人の女。この女性が弱い立場ではなく、男たちを手玉に取り孤島で生き残っていく。もちろん“女”を武器にして。ショッキングなストーリーだが、生き残るためにここまで強くなれるのは女だからと納得してしまう。
サバイバル小説
木村多江が主演で映画化もされた傑作です。トラブルで無人島に流れ着いた複数の男と、たった一人の女。男女比のバランスが崩れ、しかも食料調達もままならない極限状態の環境になると、人はどう振る舞うのか。非常に興味深い展開が楽しめます。
ミステリーではなく。
重く、特に救いはない話。
しかしそれこそが桐野夏生であるとも言えます。
一応ミステリー的な体裁は持っていますが、そこに描かれるのはただその事件後の人々。
解決?しようとはしますが、解決されるでもなく。
結果としてはただその現象を受けた人々のことが重苦しく描かれ、のしかかってきます。
子供が行方不明になるというショッキングな入り
最愛の子供が行方不明になってしまう。しかもそのとき母である自分は夫ではない人と会っていた。どうしようもないほどの状況だが、これは誰かにハメられたのかも?
罪の意識と子供への愛情の狭間で苦しむ主人公、その結末には身震いさせられる。
謎が謎を呼ぶ
ある片田舎で起きた事件をきっかけに、様々な歪んだ人間模様が次々と明らかになるストーリーです。謎が謎を呼び、事件の真犯人は一体だれなのか、人間不信になりそうです。息つく間もないほど一気に読ませる、桐野夏生の代表作です。
実話を元に出来た小説
当時エリート女性が夜の女になってどうして殺されたか、大変興味が持ってこれもほぼ一気読みしました。女の持っている暗い汚い面が桐野さん独特の冷静なピッチで描かれていて、精神的にきつい時もありましたが、読後感はさっぱりします。女として生きる意味をかんがえさせられる小説でした。
この作品で広く名が知れ渡りました
東電OL殺人事件という実際の事件を題材に取材した作品でどこまでが本当でどこからが作者の想像か、全部本当なのかと思わせる物語です。主人公が裕福ではないのに超有名高校に入学し、そこで感じた劣等感がリアルです。エリートとして有名企業に入社したにも関わらず感じる空虚感を、身体を重ねることで埋めていく彼女の壊れていく様に、ページをめくる手を止められないです。
江戸川乱歩賞を取った作品
村野ミロというしかたなしに探偵事務所をしている主人公が、内藤という訳ありな男と関わったせいでなぜかヤバイ人たちに追われるという入りで、やがて2人が謎を明らかにして行きそして引かれ合う。
なんと言ってもミロのキャラクターが素敵です。ちょっといい加減で男に惚れやすく、隙だらけなのに何故か憎めない。
コミュニティー滅亡の物語。閉鎖的な世界のきつさがリアル。
思想ある村のサラブレット青年を軸に、村へやってくる人々たちによって変わっていく村と青年の物語です。
古参村人たちの雰囲気の閉塞感、すでに人が少なくて滅びそうな村に一癖も二癖もあるもある人しか入村しないという展開が怖いです。
全編に流れる弱いと足元を見られる感、生きるって大変ですよね。
外をほとんど知らず村で生きる青年がだんだん変わっていく姿が悪い方向でハラハラします。
善良とはいえなくもないけど悪いやつでもなかった、愚直なタイプな主人公。
童話だったらハッピーエンドなのに、全くハッピーエンドな選択肢を選べないのか読んでいて胸が苦しくなります。
いわゆる真面目系クズなのでしょう。
しかし人間にはそういう素養がないとは言い切れない、そう思うと、主人公の選択が他人事とは思えず辛さの連続です。
けれどもそういう人間はやはりそれなりの結末を迎えるものです。
人生の反面教師として読者に反省を促してくれます。
名前は聞いたことがあるけどよく知らないという人も、読んだ後は「細雪」が読みたくなる小説。
谷崎潤一郎とか興味ない、という人にほど勧めたい「デンジャラス」。
谷崎潤一郎の著作、「細雪」は、彼の奥さんとその姉妹たちと暮らすという若干ハーレム味のある生活が元になっています。
そんな「細雪」の登場人物のモデルの1人、重子の目から通した谷崎と自分を含めた女たちの生活を描いています。
しかしうつろいやすい谷崎の感情に振り回される重子と姉妹たち。
姉妹も重子も谷崎の気を引きたくてたまらず、寵愛を奪い合います。
一見すると権力者の愛の奪い合い構造のようでもありますが、単純に女としてではなく人間として気を引きたい感情が垣間見得ます。
女たちが谷崎に人間として認めてもらいたい、というのを見ているあんまりな谷崎がよほど魅力的なのだろうかと思えてきます。
谷崎のことがどんどん気になり、読了後は「細雪」が読みたくなる小説です。
救われない人間もいる
娼家で産み落とされ、親が誰かも分からないまま児童養護施設で育った主人公。
娼家では大人たちから汚いものとして扱われ、児童養護施設でも親が分からないことでいじめられ、ただただ凶悪な人間に育って行く。
さらに救われないのは、そんな主人公の周りに誰一人として善良な人が居なかったこと。
数々の悪事を働いて過ぎていく主人公の人生は救われず、読んでいて絶望感に包まれました。
タワマン主婦たちを露悪的に書きすぎではと心配になる一冊。
タワマンのママ友たちが不倫やらお受験やらで気を揉んだりすれ違ったりする物語です。
あらすじだけだと陳腐でよくある系なのでは、と思いますがさすがの桐野夏生。
設定はあるあるでも一人ひとりがあるあるだけど困ったタイプの人が集まったタワマンです。
全員普通と言えなくもないのに、全然共感できない身勝手さばかり。
しかし人間としてみると一般的な普通の範疇にも収まるところが、キャラ設定の秀逸さです。
全員いそう、でもこんな人たちが一挙に集まったらそりゃ揉めるでしょうね、としか思えません。
ちょっとした対応のミス、じぶんの間違いから少しずつ苦しんでいくのが興味深いです。
普通の人たちのちょっとだけありきたりなゴシップ的小説にもかかわらずリーダビリティのすごさが尋常ではありません。
おしゃれ主婦雑誌「VERY」で連載されていたのもブラックジョーク的です。続編の「ロンリネス」もおすすめです。
今まで少し違う桐野作品
多くの作品は「性」「金」「欲」のようにドロドロとしたテーマが多い中、この作品は福祉制度が崩壊して渋谷の街で生活することになった少年の物語。
「こんな悲惨な社会になるわけない」と思いながら当時読んでいましたが、危機的な状況を迎えている2020年現在、ちょっとリアリティが出てきたなと感じています。
今までの生々しい作品とは少し違う、ちょっとだけ社会派な雰囲気の作品です。
主人公が全く共感できない最悪おじさんの結末が気になってしまう秀逸小説。
あんまり人間性の良くないおじさん主人公薄井。
社会性はなんとか保っているとはいえ全く好ましく思えない薄井に、はやくみっともない自業自得な結末を迎えてほしいと思ってしまいます。
そんな薄井の踏んだり蹴ったりな転落人生記かなと思いきや、突如現れる謎のおばさんの存在。
顧みてこなかった家庭に帰ると、妻がいろんな不満を溜めて相談に乗ってくれる謎のおばさんを家に入れています。
相談に乗ってくれるおばさんは、家に泊めて一緒に生活することで問題を解決してくれるというのです。
急に怖い話が登場して、一体どうなるのかという気持ちに読み手を引きずります。
いくら人間性が良くないとはいえ、帰ったらよくわからないおばさんがいるのはかわいそうすぎます。
それにひどい目に遭うなら薄井の因果応報なオチが良いと思うのが人間の性。
最悪おじさん対謎のおばさんとなるのか、家庭がどうなっていくのが全く予想がつきません。
主婦のリアルな気持ち
我ままで勝手な家族にうんざりし、自分の誕生日に家族をすてて来るまで家でする主婦の物語。
この作品も血生臭さはないが、中年の既婚女性の抱える葛藤や矛盾する気持ちをきっちり表現されているのではと感じます。
桐野夏生作品の中では軽い気持ちで読める1冊です。
バラカの人生の物語。波乱万丈が存分に味わえる。
中東から売られて養子となり日本にやってくる赤ちゃんの名前がバラカです。
全くバラカには非がないのに、苛烈で数奇な人生の物語です。
波乱万丈なんて設定だけで、あまりにもフィクション的でのめり込めないのでは、と思う人もいるかと思います。
しかしエピソードセレクトがないとは言い切れないものばかりで、作者お得意のぶっ飛び感のあるギリギリラインを攻めてきます。
バラカのせいではない周りの人間たちのよくない選択ピタゴラスイッチが、波乱万丈の点と点を滑らかにしています。
なので興醒めさせません。
読後感は独特です。
衝撃的な内容ながらも自分の回りにももしかしたらあるかも知れない内容。
衝撃的な内容ながらも自分の回りにももしかしたらあるかも知れない内容。アウトという題名だけで内容を全く知らず本を読んだ私は、あまりのショッキングな内容にほぼ一気読み。
覚めきった夫婦中、会話のない親子人生に半分疲れたような主人公と介護と貧乏で先の見えないよしえ、はで好きで借金まみれの邦子、旦那の浮気に悩む若い弥生。深夜の工場の職場で働くパート仲間がたまたま死体バラバラ作業に手を染めてしまう。邦子のミスで事件に巻き込まれてしまうが、主人公はその中で1人出口を見いだそうとする。わたしの職場はホテル勤務で回りにも訳ありのパート仲間が多いので、一時期誰がよしえの役で
誰が邦子とか役を決めて楽しんでました。田中美沙子さん主役のドラマも楽しみで観てました。
もう一度読んでみたい小説のトップです。
冷静にバラバラに。
映画化もされた、桐野夏生の代表作と言えるのでは。
一見普通な人々が普通でないことをする。または普通でないことが起きる。
でも彼女らの姿を見ながらよくよく考えたら、やっぱり普通の人たちなのかもしれない。
自分と彼女らを分けるのは何なのか。ということを考えさせられる桐野夏生の作品。
スリルと生々しさ
平凡な主婦のが家庭内暴力に悩み夫を殺害してしまい、その死体をバラバラに切断し…という、実際にありえなくもない設定にまず引き込まれます。
殺人の事実を隠しながら仕事に行き、切断した死体を処理し、警察の目を恐れる…ドラマや映画にもなりましたが、これらの生々しい描写は活字で読むからこその面白さだと思います。
映像化され話題になった作品
内容は非常にグロテスクで殺人して遺体をバラバラにするというハードな内容ですがそこまで追い詰められた過程とそれに協力する女の友情,助け合いが自然に描かれています。夫を殺さずにいられないほど追い詰められる妻の立場が哀れでしかし現実的でした。
女の本性
親の介護を頑張っている普通の女性が、信じがたい悪行を人知れず行っています。物の見方を変えれば、どんなことをやっても生き抜こうとする、女の強い本性が垣間見えます。「アウト」とのタイトルの意味は、読んだら納得です。