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ゆかりさんの「桐野夏生おすすめ作品」

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更新日: 2020/03/16

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ランキング結果

コミュニティー滅亡の物語。閉鎖的な世界のきつさがリアル。

思想ある村のサラブレット青年を軸に、村へやってくる人々たちによって変わっていく村と青年の物語です。
古参村人たちの雰囲気の閉塞感、すでに人が少なくて滅びそうな村に一癖も二癖もあるもある人しか入村しないという展開が怖いです。
全編に流れる弱いと足元を見られる感、生きるって大変ですよね。
外をほとんど知らず村で生きる青年がだんだん変わっていく姿が悪い方向でハラハラします。
善良とはいえなくもないけど悪いやつでもなかった、愚直なタイプな主人公。
童話だったらハッピーエンドなのに、全くハッピーエンドな選択肢を選べないのか読んでいて胸が苦しくなります。
いわゆる真面目系クズなのでしょう。
しかし人間にはそういう素養がないとは言い切れない、そう思うと、主人公の選択が他人事とは思えず辛さの連続です。
けれどもそういう人間はやはりそれなりの結末を迎えるものです。
人生の反面教師として読者に反省を促してくれます。 

名前は聞いたことがあるけどよく知らないという人も、読んだ後は「細雪」が読みたくなる小説。

谷崎潤一郎とか興味ない、という人にほど勧めたい「デンジャラス」。
谷崎潤一郎の著作、「細雪」は、彼の奥さんとその姉妹たちと暮らすという若干ハーレム味のある生活が元になっています。
そんな「細雪」の登場人物のモデルの1人、重子の目から通した谷崎と自分を含めた女たちの生活を描いています。
しかしうつろいやすい谷崎の感情に振り回される重子と姉妹たち。
姉妹も重子も谷崎の気を引きたくてたまらず、寵愛を奪い合います。
一見すると権力者の愛の奪い合い構造のようでもありますが、単純に女としてではなく人間として気を引きたい感情が垣間見得ます。
女たちが谷崎に人間として認めてもらいたい、というのを見ているあんまりな谷崎がよほど魅力的なのだろうかと思えてきます。
谷崎のことがどんどん気になり、読了後は「細雪」が読みたくなる小説です。

タワマン主婦たちを露悪的に書きすぎではと心配になる一冊。

タワマンのママ友たちが不倫やらお受験やらで気を揉んだりすれ違ったりする物語です。
あらすじだけだと陳腐でよくある系なのでは、と思いますがさすがの桐野夏生。
設定はあるあるでも一人ひとりがあるあるだけど困ったタイプの人が集まったタワマンです。
全員普通と言えなくもないのに、全然共感できない身勝手さばかり。
しかし人間としてみると一般的な普通の範疇にも収まるところが、キャラ設定の秀逸さです。
全員いそう、でもこんな人たちが一挙に集まったらそりゃ揉めるでしょうね、としか思えません。
ちょっとした対応のミス、じぶんの間違いから少しずつ苦しんでいくのが興味深いです。
普通の人たちのちょっとだけありきたりなゴシップ的小説にもかかわらずリーダビリティのすごさが尋常ではありません。
おしゃれ主婦雑誌「VERY」で連載されていたのもブラックジョーク的です。続編の「ロンリネス」もおすすめです。

主人公が全く共感できない最悪おじさんの結末が気になってしまう秀逸小説。

あんまり人間性の良くないおじさん主人公薄井。
社会性はなんとか保っているとはいえ全く好ましく思えない薄井に、はやくみっともない自業自得な結末を迎えてほしいと思ってしまいます。
そんな薄井の踏んだり蹴ったりな転落人生記かなと思いきや、突如現れる謎のおばさんの存在。
顧みてこなかった家庭に帰ると、妻がいろんな不満を溜めて相談に乗ってくれる謎のおばさんを家に入れています。
相談に乗ってくれるおばさんは、家に泊めて一緒に生活することで問題を解決してくれるというのです。
急に怖い話が登場して、一体どうなるのかという気持ちに読み手を引きずります。
いくら人間性が良くないとはいえ、帰ったらよくわからないおばさんがいるのはかわいそうすぎます。
それにひどい目に遭うなら薄井の因果応報なオチが良いと思うのが人間の性。
最悪おじさん対謎のおばさんとなるのか、家庭がどうなっていくのが全く予想がつきません。

バラカの人生の物語。波乱万丈が存分に味わえる。

中東から売られて養子となり日本にやってくる赤ちゃんの名前がバラカです。
全くバラカには非がないのに、苛烈で数奇な人生の物語です。
波乱万丈なんて設定だけで、あまりにもフィクション的でのめり込めないのでは、と思う人もいるかと思います。
しかしエピソードセレクトがないとは言い切れないものばかりで、作者お得意のぶっ飛び感のあるギリギリラインを攻めてきます。
バラカのせいではない周りの人間たちのよくない選択ピタゴラスイッチが、波乱万丈の点と点を滑らかにしています。
なので興醒めさせません。
読後感は独特です。

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