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言葉の力を信頼していることが伝わる
ギャングというよく分からないものが世界を恐怖に陥れている。そんな中でも日常は続く。とても変わった名前の二人と一匹。彼らの明日はいかに。
筋らしい筋はあるにはあるがほとんど無視されている。それよりかは言葉の力が圧倒的すぎるあまり、壊れたオーディオブックを聞いているかのような不思議な感覚に陥った。知性とハチャメチャと社会情勢とアングラと詩情と。それらをブレンドしてここというタイミングで力量でバランスを取る。とても真似できない唯一無二の作品である。
「幸せ」は他人が決めるものではない
「社会」から優しくされない系の登場人物が出てくるとついノってしまう。やはり私にその要素があるからだろうか。
主人公にとってのアイデンティティはコンビニ店員であることに他ならない。そこで誰かと出会ったり、正社員を目指したりとかは度外視。ただ店員として業務をこなし続ける。この作品のクライマックスは主人公が「普通」に戻ろうと奮闘するところだろうか。ネタバレ防止のため詳細は伏せるが、「普通」とは?「幸せ」とは?その価値観の家族との齟齬が関係を歪ませてしまう。また、ラストの心情描写はハッピーエンドを感じさせる。皆もやっとしたまま主人公は本来の姿(=コンビニ人間)へと戻る。
現代を象徴するような作品である。
私たちの「あみ子」の部分
あみ子の天真爛漫さとそれを受容できず排除してしまう周囲の人々の姿を柔らかい文体で描写した傑作。自分にも「あみ子」のような性格があって、それゆえに孤独だったこともあった。私と違うところは、きっと本人は孤独となった理由を理解できていないということ。そのまま育っていくことが彼女にとってのハッピーエンドであると望みたい。読むのが辛いからこのくらいはね・・・