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平井和正のハードボイルドを桑田次郎の描線で
桑田次郎(当時。その後「桑田二郎」と改名)のシャープな描線は一度見たら忘れられない。その絵だけでSF漫画にひとつのスタイルを築いたのである。平井和正の原作を得て印象的な作品を数々遺しているが、「人類ダメ小説」を標榜する平井の作風がもっとも強く出て、しかも桑田次郎の表現力が十全に発揮されている点では、『デスハンター』がいちばんだろう。
宇宙から来た憑依体「デス」の不気味さもさることながら、それを駆りだすデスハンターを率いる人物、シャドウの非情・非道に戦慄する。
救世主かアンチヒーローか? まつろわぬ表現者、水木しげるの代表作
人類の究極の理想である「地上天国」をつくりだすため、悪魔を呼びだして契約する、希代の天才、「悪魔くん」こと松下一郎少年。少年マンガ的にはヒーローの立ち位置だが、むしろ、平穏な日常を擾乱するアンチヒーロー的な気配を持って読者の前に登場する。
作者の水木しげるは、体制側の規範、正論的な姿勢、昼間の論理に対して、つねに飄然と異議を唱えた表現者だった。
古今東西のオカルト文献を勝手流に引用、独特の絵柄・演出と相まって、濃厚な雰囲気を醸している点も出色。
小夜子の神話的存在感、魔性の天稟にして呪いですらある超能力
超能力を題材にしたSFの系譜にあって、ひときわ異彩を放つ傑作がふたつある。どちらも1980年代前半、日本の少女マンガ誌に発表されたものだ。ひとつは山岸凉子の『日出処の天子』。そして、もうひとつが吉田秋生の『吉祥天女』だ。
甲乙つけがたいが、ここはヒロイン叶小夜子の存在感が鮮烈な『吉祥天女』をあげよう。ファム・ファタルとも言えるが、そうしたナイーヴな偶像化を許さない強度で、彼女は読む者の喉元へ切っ先を向けてくる。その超能力は「便利なツール」ではなく、魔性の天稟であり、彼女自身にとっての呪いですらある。