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飛鼠さんの「台湾・中国ドラマランキング」

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更新日: 2021/12/02

飛鼠

ランキング結果

乱世において、優しさは弱さか?

この問いに『否』を叩きつける主人公楊平。存在も知らなかった双子の兄にかわって皇帝となった彼が、その優しさを捨てろと誰に何度言われても貫き通し、頼りなさげなこいぬから、天下すべてを慈しむ龍の器となっていく。
彼のためなら家族以外誰が死のうと眉一つ動かさない兄貴分・仲達、平くんの一番の理解者となっていく凛々しき皇后・伏寿様、欲しいものがいつも自分の手になくもがき続ける憐れな敵の御曹司・曹丕。登場人物のキャラ立ちが良く、敵役も一口に敵と言い切れない深みがあって魅力的。漢の栄華など生まれたときから知らない若者世代と、斜陽の漢のために命の捨てどころを探している老臣世代との対比が見事。三国志ミリ知らでも面白く観られます。

映画じゃなくてドラマなんですよこれ

1930年代、実家の没落により果断な勝負師とならざるを得なかった"かつての繊細な男の子"であるスパダリ豪商・程鳳台が、口より先に手が出るエキセントリック食欲無尽蔵ハムスターにして他の追随を許さない芸の鬼・商細蕊と出会ったことで、徐々に不穏さを増す北平(北京)において、互いの人生に大きな影響を与えあっていく物語。脚本の良さは他の方々が書いてくださっているのでこちらではそれ以外について。

中国ドラマは多くが声優を使ってあとから吹替をしますが、主役の二人は演じている役者本人が吹替も担当しています。

いや映画だろ?という映像の質感、華洋折衷のモダンな富豪のお屋敷、丁寧にセレクトしたことがうかがえる瀟洒なお衣裳の数々、とにかく感じる制作陣の意気込み。そして主役のひとり、商細蕊(京劇の名女形)をはじめ、弟子や良きライバルなど、京劇役者が化粧をすると素晴らしく美しくかわいい。京劇の化粧というと『おお塗っている……』止まりで美しいと思ったことはこれまでなかったのですが、化粧した商細蕊ははっきりと"美しい"です。

この作品は日本語字幕翻訳者の高度な技術を感じるドラマでもあります。訳語や語尾の選び方が絶妙で、要所要所で商細蕊のかわいらしさや程鳳台の茶目っ気が伝わってきます。邦題、OPEDの歌詞の訳も、言葉の意味を考えるほどに味わい深くなる素敵な訳です。

一点だけ惜しいのは、作中における日本関連の考証がかなりユルい点。なにしろほかのクオリティが揺るぎなく高いので、この点が悪目立ちしてしまっています。ただ、時代背景と、BLである原作を『共通の敵に対しそれぞれのやり方で敢然と立ち向かう二人の絆』の物語としてドラマ化企画を通したのであろうことを考えると、日本関連の考証に力を割いてほしいと望むのは贅沢なことなのだとも思います。

エンターテイメント作品の中には、この作品を鑑賞できる時代に生まれて良かった、と思える作品があります。私にとって、このドラマは間違いなくそうした作品の一つです。

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