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ナチスに抗う医師たちの闘いと苦悩
ドイツナチス時代、精神病患者は生産性のない者として抹殺されることになったのを受け、医師たちが命令に背いてなんとかして治療をしようとする、極限まで追い詰められた状況下での決死の努力と葛藤を描く力作。
実話の猟奇事件を元にしたミステリー
パリで白人女性を殺して切り刻んで食べるという、猟奇的な事件を起こした佐川という青年と実際に文通した唐十郎が、事件とその手紙をもとにオマージュのように描いた作品。
白人と黄色人種を、無垢なものと汚れたものと対比させることによって更に後味の良くない世界を醸し出している。
家族の闇を描きタブーに挑んだ出世作
とにかく温かいもの、かけがえのない唯一無二なものとして描かれ捉えられがちな家族関係を、表面的なハッピーエンドなどは無しに、遠慮なく内面をえぐり出す作品。
家出、同棲、AV、転校生、職場のヒエラルキー、家族との久々の再会。どんな人にも心に覚えがあるけれど、いつもは対峙を避けている部分がキリキリとするような筆致で描かれている。
お伽話のようで異なる環境での生活の根無草感や虚無感を描く、ノマドの本質をとらえた作品
慣れ親しんだ環境を出て新たな環境や異文化に接する時の、とまどいや驚き、興味や探究心、すれ違いや摩擦、誤解、疲労や諦め、ありとあらゆる状況や生じる感情を、時に動物にたとえたりしながら繊細に描き出す作品。
ヒトの心の闇と神への問いかけ
ドイツ系の血を引くフランス人の若者が、当時権力を握っていたナチスに加担するうちに、かつて学生時代に友人だった神父への拷問にも手を染めてしまう。
救いのないような状況と互いの心境、信仰心の中のヒロイズムとある種の陶酔、そしてこれほどまで人間は残酷になれるのか、それでも心のどこかでは神に救いを求めてしまうエゴを余すことなく描く、自らも敬虔なカトリック教徒であった遠藤周作の、後の大作「沈黙」へとつながるきっかけとなったデビュー作。