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前田 有一さんの「韓国映画ランキング」

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更新日: 2020/11/04
前田 有一

映画批評家

前田 有一

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まえがき

『パラサイト 半地下の家族』(19年)がカンヌ映画祭と米アカデミー賞を制したことで、アジア映画の序列は完全にいまや韓国がトップといった印象になった。

さらに『愛の不時着』以来、ネット配信の形で韓流ドラマのブームも再燃しており、韓国コンテンツは今が旬といえるだろう。

韓国映画は、国内向け作品の隆盛の陰で、国を挙げて「海外に売れる」作品にも力を入れてきた。『パラサイト 半地下の家族』のような賞ウケするドラマから、『愛の不時着』のようなエンターテイメントまで、多様性を重視してきた点も特筆に値する。さらには、実在の事件や史実を扱うなど、政府批判も臆せず行う社会派ドラマのジャンルでも、韓国は良作を量産している。

そこでこの記事では、そうした各ジャンルの傑作を紹介することで、韓国映画の幅広い魅力を網羅できるランキングを作ることにした。

ランキング結果

1オアシス(映画)

オアシス(映画)

引用元: Amazon

制作年2002年
上映時間132分
監督イ・チャンドン
メインキャストソル・ギョング(ホン・ジョンドゥ)、ムン・ソリ(ハン・コンジュ)、アン・ネサン(ホン・ジョンイル)、リュ・スンファン(ホン・ジョンセ)、ソン・ビョンホ(ハン・サンシク)ほか
主題歌・挿入歌-
公式サイト-

タブーに挑んだ究極の恋愛映画

韓国映画といえば恋愛映画、なんて考えている人はもうほとんどいないだろうが、かつて冬ソナブームのころはまだそんなイメージが残っていた。

そんな中、韓国映画界がその懐の深さを世界に思い知らせた恋愛ドラマが『オアシス』だ。

障害者と健常者の恋愛なんてのは珍しくもないが、脳性麻痺のヒロインと、婦女暴行の犯人の恋なんてものは、世界広しといえどこの映画しかないだろう。

背骨が変形し、治療が必要なほどの役作りを行った主演女優ムン・ソリも、チック症状を最後まで続けたソル・ギョングの演技も、ただただすさまじいの一言に尽きる。

人が人を愛することの本質を、究極の設定の下で描き出したイ・チャンドン監督の手腕も見事。

とかく偏見を持たれがちな韓国映画だが、これを見ればそんなものは一発で吹き飛ぶ。これほどの傑作を作り上げた人たちには、ただただ尊敬の念しか浮かばない。

2カンナさん大成功です!

カンナさん大成功です!

引用元: Amazon

制作年2006年
上映時間116分
監督キム・ヨンファ
メインキャストキム・アジュン(カン・ハンナ/ジェニー)、チュ・ジンモ(ハン・サンジュン)、ユソン(アミ)、イム・ヒョンシク(ハンナの父)、キム・ヒョンスク(ジョンミン)ほか
主題歌・挿入歌MARIA / 梨花
公式サイト-

日本の原作を超えた面白さ

「オアシス」が陰なら、『カンナさん大成功です!』は陽というべき、明るく楽しいエンタメ女子ムービーだ。

とんでもないおデブ体形のカンナさんが、全身整形で美女に変身。果たしてその人生はどう変わるのか? を描く興味深いシミュレーションドラマ。

日本の鈴木由美子の原作漫画を大幅にアレンジし、自分たちの国らしさをもって映画化したあたりも好感が持てる。

見た目が美人になったあとも、自己評価が低い女子のまま。そんな共感度の高いヒロインの奮闘からは、自分らしさを持つことがいかに大事かという、まっとうなテーマが浮かび上がる。

笑って泣いて、最高の鑑賞後感を味わえる傑作ラブコメ。カップルでも友達同士でも。万人にお勧めできる。

3国家が破産する日

国家が破産する日

引用元: Amazon

制作年2018年
上映時間114分
監督チェ・グクヒ
メインキャストキム・ヘス(ハン・シヒョン)、ユ・アイン(ユン・ジョンハク)、ホ・ジュノ(ガプス)、チョ・ウジン(パク・デヨン)、ヴァンサン・カッセル(IMF専務理事)ほか
主題歌・挿入歌-
公式サイト-

『パラサイト 半地下の家族』にも負けていない

『国家が破産する日』は骨太な政治ドラマであり、現在の韓国が抱える問題の原因がどこにあったのかを指摘する、社会派映画でもある。

その回答として、この映画は97年の通貨危機こそ大問題だったと断じ、そこで行われた売国的経済政策がいかに非人道的であったかを、非常にわかりやすく、スリリングに見せてくる。

しかも凄いのは、それを韓国の過去の出来事として扱うのではなく、その中から普遍的な問題点を抽出し、実は同じことが今、世界中で、つまりアナタの国でも起きているんですよと最後に訴えかけるところだ。

この瞬間、本作は全世界の人たちにとってみる価値のある、優秀なドラマへと変貌するのである。

『パラサイト 半地下の家族』がそうであるように、優れた社会派作品とは、ある時代のある地域(この場合は現代の韓国)を描いているように見えて、そのじつどの時代のどの国の人が見ても、これは我が事だと思い知れる当事者性を感じさせるもの。

その意味で『国家が破産する日』は、『パラサイト 半地下の家族』と同等レベルの普遍性と面白さを持った作品で、自信をもっておすすめできる。

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