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杉村 啓さんの「めんつゆランキング」

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更新日: 2020/08/26
杉村 啓

醤油・日本酒研究家/グルメ漫画研究家

杉村 啓

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まえがき

最近のめんつゆは非常にクオリティが高く、おいしいのは間違いありません。よっぽどの凝り性でなおかつ料理上手でない限りは、自作のめんつゆをあれこれ模索するよりも、市販のめんつゆの中から好みの味を探す方が手っ取り早かったりします。

市販のめんつゆは、濃度と用途によって分類できます。濃度は希釈して使う「濃縮タイプ」とそのまま使う「ストレートタイプ」に。用途は何にでも使う「めんつゆ」と、そうめんに使う「そうめんつゆ」、蕎麦に使う「そばつゆ」です。

味わいの違いは、「濃縮タイプ」は保存性を良くするために塩分濃度を高めなければならないため、醤油の比率が高くなります。ということは、その分だしの割合が下がるため、どうしても「だし感」としてはストレートタイプに軍配があがります。その代わり、濃縮タイプは自分で濃さを調整できるメリットがあるのです。

「めんつゆ」には濃縮タイプとストレートタイプの両方があり、「そうめんつゆ」と「そばつゆ」はすぐに食べられるようストレートタイプが前提となっています。「そうめんつゆ」はさっぱりと食べられるよう、「そばつゆ」に比べると醤油を弱めてだしをしっかり感じられるようになっています。「そばつゆ」は蕎麦の香りも楽しめるように、だしの香りを少し弱めているのですね。好みの味を探すときの参考にしてみてください。

私はだし感が強めのタイプが好みなので、この分類でいうと「ストレートタイプ」の「そうめんつゆ」に好みが多くなっています。

ランキング結果

回転式そうめん流し発祥の地の、少し甘めなめんつゆ

鹿児島県指宿市にある『唐船峡』のめんつゆです。実は唐船峡は「回転式そうめん流し」という、流れるプールのようなドーナツ状のそうめん流し器発祥の地でもあります。

だし感がとてもしっかりとしためんつゆで、鰹節には枕崎市や指宿市山川という、鹿児島の誇る産地のものを使用。さらにさば節や煮干し、昆布、椎茸も使って、幾重にも旨みを重ねています。

味のもうひとつのポイントは「甘い」こと。九州の醤油には甘いものがあると聞いたことがある人も多いでしょう。その甘さをめんつゆにも生かしているのです。でも、ただ甘いだけじゃなく前述のだし感がしっかりとしているので、「めんつゆ」としての味わいが前に出ていて、甘みが旨みを支えているという感じです。

甘めのめんつゆに抵抗がない人はぜひ試してみてください。やみつきになる味わいです。

スライスされた椎茸がゴロゴロ入っているそうめんつゆ

ひろた食品は関西を中心に広く愛されている「手作りひろたのぽんず」シリーズを造っている会社です。

このそうめんつゆは、名前の通り椎茸のだしがしっかりと効いています。定番の鰹節(イノシン酸由来の旨み)や昆布(グルタミン酸由来の旨み)だけでなく、椎茸(グアニル酸由来の旨み)を加えることで、味に奥行きをだしているのです。旨みは異なる由来のものを重ねた方が味わいが強くなるため、しっかりと旨みが効いたつゆなのです。

さらに特徴としては、瓶の底にはスライスされた椎茸がゴロゴロと入っていることでしょう。つゆの旨みをたっぷりと吸い込んだ椎茸はそうめんの具にぴったり。広口の瓶のため簡単に取り出せます。そうめんを食べるときは、ぜひ椎茸ごと味わってみてください。

本枯鰹節をたっぷり使ったバランスの良いそばつゆ

そばつゆからも紹介します。

「本枯鰹節そばつゆ」はその名の通り、本枯鰹節をたっぷりと使ったそばつゆです。鰹節にはいくつか種類があり、「本枯」は非常に手間のかかる「カビ付け」と「日乾」という工程を3〜4回繰り返した、最高級品です。カビと聞くと、食品にいいの? と思うかもしれませんが、ここで使われるカビによって鰹節の中から水分が抜け、味わいが凝縮し、長期保存ができるようになるので大切な工程です。腐ったり食べられなくなったりという意味ではありません。

この本枯鰹節のだしがたっぷりと使われているのですが非常にバランス良く仕上がっているので、いかにも鰹節! というように前に出てくるわけではありません。強すぎず、かといって弱くもなく、じっくり味わってみればみるほど奥底でしっかりと主張していることがわかる鰹節感という、洗練された味わいです。

気がついたらいつもより多く蕎麦やそうめんを食べてしまっていた、というような、食べ飽きのこないバランスに優れたつゆです。

焼きあご二段仕込みで風味がよく、料理にも使いやすい

縮タイプからも一本紹介いたします。

「あご」とはトビウオのこと。トビウオは海面を飛ぶために、他の魚に比べても脂肪分が少ない特徴があります。脂肪分はいわゆる雑味につながりやすいため、少ないトビウオでは非常に上品ですっきりとしただしがとれるのです。

「くばら あごだし」はあごを焼き上げることで香ばしさをプラス。さらに「姿仕込み」でそのままだしをとる他に、「粉末仕込み」でさらに強いだし感を加える「二段仕込み」でだしをとっています。

非常に風味のバランスが良く食べ飽きません。さらには濃縮タイプは料理に使っても味がバシッと決まるところがうれしいところです。

ちなみに「くばら」は久原本家グループのブランドのひとつなのですが、もうひとつ有名なものに「茅乃舎」があります。

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