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前田 有一さんの「SF映画ランキング」

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更新日: 2020/11/24
前田 有一

映画批評家

前田 有一

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まえがき

SF=サイエンス・フィクションというものは、どんな絵空事でも描ける映画とは相性のいいジャンルである。

地球や宇宙、あるいはミクロの世界など舞台は自由だし、時代劇から現代劇まで時代も好きに設定することができる。作り手にとって大変自由度が高く、アイデアマンならいくらでも腕の振るいようがある。

もっともどんな現実離れした舞台設定であっても、物語の根底にはリアルな現代社会への批判や問題提起などが、暗喩として流れていることが少なくない。このあたり、「ぼくのかんがえた、さいこうにおもしろいせかい」を描写することに重きを置くことが多い、ファンタジージャンルとはやや異なる。

もちろんSFにだって、舞台設定や世界観の面白さを見せることを主目的とした作品もあるが、やはり王道としては、今私たちが生きる世界への興味と関心から作られた、いわば社会派映画に近いものがあげられるだろう。

そこで今回は、そうした王道のSF作品はもちろん、設定や世界観が魅力的なものなど、このジャンルを幅広く味わえる作品を集めてみた。どれもめちゃくちゃ面白く、退屈知らずなものなのでぜひご覧あれ。

ランキング結果

1バタフライ・エフェクト

バタフライ・エフェクト

引用元: Amazon

制作年2004年
上映時間113分
監督エリック・ブレス、J・マッキー・グルーバー
メインキャストアシュトン・カッチャー(エヴァン)、エイミー・スマート(ケイリー)、ウィリアム・リー・スコット(トミー)、エルデン・ヘンソン(レニー)、メローラ・ウォルターズ(アンドレア)ほか
主題歌・挿入歌Stop Crying Your Heart Out / オアシス
公式サイト-
動画配信サービスU-NEXT:なし Amazon Prime Video:なし Netflix:なし Hulu:なし

100点満点中99点

私は長年、映画批評のサイトを運営しているのだが、公開当時、この映画を100点満点中99点という、かつてない高得点とともに紹介したところ、大変な評判となり、何十万人が訪れ読むところとなった。

本来、マイナーなB級SF映画として、一部のファン以外からは忘れ去られていたであろう『バタフライ・エフェクト』は、そんなわけで今ではカルト的人気を博している。その一助になれたのではないかとひそかに自負している。ちなみにたくさん続編が作られたが、やはりこの一作目を超えることはできなかった。

この映画は、愛する幼なじみの女の子の人生を救うために、何度も過去に戻って歴史を変えようとする男のお話である。だが彼の試みは、ことごとく運命と偶然に翻弄され、予期せぬ方向に未来がねじ曲がり、頑張れば頑張るほど彼女を不幸にしてしまうという理不尽な結果となる。

よかれと思ってやったことはことごとく裏目。ズタボロになってゆく彼女の姿を見るたびに、主人公と観客の心は痛み続ける。物語は徐々に深刻度を高め、乗っぴきならないところまで追い詰められた主人公は、最後の最後に信じられない挑戦に挑む。

人はこれほどまでに、相手を思いやることができるのか。愛すべき純粋な主人公の、悲壮なる最後の挑戦は、誰もが涙なくしては見られまい。

タイムスリップものに外れの映画は少ないが、『バタフライ・エフェクト』はその中でも、最高峰に位置する作品である。

もしまだ見ていない人がいたら、あなたは幸せだ。余計な検索などしないで、ネタバレをしないうちにさっさと観てしまうことをおすすめする。

ソフトによっては、監督が本当はこちらをやりたかったという、ディレクターズカットな別の結末部分がおまけで入っている。どちらがいいかは人によるが、いずれにしてもこの映画の堅牢な脚本が、どれほどの試行錯誤の末に出来上がったのかが、うかがい知れるものとなっている。

2TIME/タイム

TIME/タイム

引用元: Amazon

制作年2011年
上映時間109分
監督アンドリュー・ニコル
メインキャストジャスティン・ティンバーレイク(ウィル・サラス)、アマンダ・セイフライド(シルヴィア・ワイス)、キリアン・マーフィー(タイムキーパー・レイモンド・レオン)、オリヴィア・ワイルド(レイチェル・サラス)、マット・ボマー(ヘンリー・ハミルトン)ほか
主題歌・挿入歌-
公式サイトhttp://www.foxmovies.jp/time/

「時は金なり」

「TIME/タイム」は現代社会暗喩タイプの、社会派SFの白眉である。

舞台は遺伝子操作により人類すべてが25歳で成長をストップした近未来。そこから等しく1年間の寿命が与えられる、との設定だ。主人公は貧困地区に住む男で、毎朝目覚めると常に余命は残り24時間未満である。ようするに「ビンボー暇なし」どころか「余命なし」だ。

そこから彼は働きに出て、1日労働すると、ようやく明日の分の寿命を給料としてもらえる。そして振り出しに戻る、というわけである。

そんな彼がある時、偶然膨大な余命を譲り受けることになり、運命が大きく変わる。と同時に、この奇妙な世界ができた目的、その真実を知ることになる。

このあらすじで察しのいい人はわかると思うが、この世界感は、時間をお金に見立てた設定となっている。文字通り「時は金なり」ということだ。

むろん、私達が住むこの社会でも、人は労働という形で自分の命をお金に換えて生きているのだから、基本的にはこの世界と映画の世界、全く違うところはない。

しかし「TIME/タイム」の世界では、通貨というものを一切廃止して、余命であらゆる取引をやりとりしているところがポイントである。

だから、強盗はお金ではなく余命を盗んでいくし、大金を儲けるということは、余命が大幅に伸びるという意味である。

お金を時間に置き換えたことで、より生々しく、この経済社会の本質が見えてくるという仕組みである。

この映画が製作された2011年ごろは、現在のいわゆる金融資本主義が限界に達しているのではないかとの認識が世界中で広まりつつあり、同じようなテーマのハリウッド映画が乱立していた。しかし本作は、そうした諸作品の中でも、人類が未来に進むべき明確な回答を示した点で特筆に値する。

ラストシーンは、主人公がある場所に向かうところで終わる。その場所は、アメリカのワシントンD.C.にある、とある建物そっくりである。これが意味するところを考えてみるとよい。

反緊縮やMMT等、資本主義の新しい未来、選択肢が見えてきた今日この頃。こういった議論を9年も前に提示していたこの映画の先進性には、今見ても驚かされる。

3エクス・マキナ

エクス・マキナ

引用元: Amazon

制作年2015年
上映時間108分
監督アレックス・ガーランド
メインキャストアリシア・ヴィキャンデル(エヴァ)、ドーナル・グリーソン(ケイレブ・スミス)、オスカー・アイザック(ネイサン・ベイトマン)、ソノヤ・ミズノ(キョウコ)
主題歌・挿入歌-
公式サイトhttps://exmachina-movie.jp/

とっても見た目が良い映画

非常に現代的なルックスを持つSF映画「エクス・マキナ」は、退屈知らずの面白さと、終わった後に思わず哲学的な思考を余儀なくされる、知的な後味を併せ持つ佳作である。

検索エンジン最大手創業者の、世捨て人然とした山荘に招かれたITエンジニアが、創業者が極秘裏に開発してしまっていた人型アンドロイドのAIチェックを仰せつかるショッキングな冒頭。

そのアンドロイドがまた、見た目は可愛すぎる女の子なのに会話をしていくと徐々にこちらに恐怖を抱かせるという、なんだか現実のキャバ……いや人間界にもいるようないないような設定で興味深い。

彼女と会話をしていくうちに、主人公も観客もだんだん不安になり、信じていたこの世界の足元がぐらつくような居心地の悪さを疑似体験していくことになる。

なお、ロボットを演じるアリシア・ヴィキャンデルの、照明ばっちりの明るい室内での全裸シーンがあることも本作をお勧めする理由である。

世界で最も美しい顔27位……というが、正直世界一でも異論なしの超美少女である彼女は、このあと何を血迷ったかトゥームレイダーのリメイク作にララ・クロフト役で出演し、役作りのためドラゴンフラッグも超余裕のスーパーマッチョボディ化してしまった。まったくもって、若い女は時折とんでもない間違いを犯す。

よって、ちょっと子供っぽいモデル体型の美ヌードを見られるのはこれっきりである。世の中にこんなにきれいなカラダをした人間がいるのかと、衝撃を受けること間違いない。まあ、じっさい役柄はアンドロイドなので、この時から彼女の体当たりな役作り精神は露見していたというべきか。

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