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オザワ部長さんの「吹奏楽コンクールの課題曲ランキング」

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更新日: 2020/09/03
オザワ部長

吹奏楽作家

オザワ部長

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まえがき

吹奏楽に関するどんなランキングでも、順位をつけることや上位3曲を選ぶことはとてもむずかしいです(同時に、とても楽しいです)。

今回も『ディスコ・キッド』や『復興への序曲「夢の明日に」』、『高度な技術への指標』、『音楽祭のプレリュード』、『吹奏楽のための交響詩「波の見える風景」』、『スター・パズル・マーチ』、『秘儀III −旋回舞踊のためのヘテロフォニー』なども候補として考えており、どれを選ぶか本当に迷いました。
特に、『吹奏楽のための交響詩「波の見える風景」』は大好きな曲なのですが、思い切ってベスト3を選びました!

ランキング結果

1吹奏楽のためのインヴェンション第1番 / 内藤淳一

吹奏楽のためのインヴェンション第1番 / 内藤淳一

引用元: Amazon

作曲・編曲内藤淳一 / -
演奏時間約3:30

エモいメロディ&疾走感を兼ね備えた青春課題曲

『マーチ・グリーン・フォレスト』や『ブライアンの休日』など、これまで吹奏楽コンクール課題曲に5曲も選ばれている内藤淳一先生。本職は高校の先生です。
そんな内藤先生の記念すべき課題曲第1曲目が、1983年の課題曲だった『吹奏楽のためのインヴェンション第1番』。壮大な序奏から始まり、ゆったりしたエモく切ないメロディと疾走感のあるパートが交互に登場します。何とも言えない青春感が漂う1曲です。

特に、中間部のアルトサックスソロが泣けます。また、対旋律のホルンの名脇役ぶりも見逃せません。実は、これには裏話があります。
当時、内藤先生は大学を卒業して教員になったばかりで、赴任先は工業高校でした。ヤンチャな男子部員が多い中、アルトサックスを担当していた唯一の女子部員のためにソロを、真面目で勉強熱心だったホルン男子のために対旋律を書いたのだそうです。

内藤先生にとっても「青春」であったその時代の思いを詰め込んだからこそ、みずみずしい課題曲が出来上がったのでしょう。
その後、しばらく楽譜が入手できない状態になっていたこともあり、コンサート等で取り上げられる機会があまり多くなかったこの曲ですが、最近楽譜が復刻されたことも手伝って、今後は再評価されていくことでしょう。

なお、オザワ部長にとっては中学時代に初めて演奏した課題曲。そして、あらゆる吹奏楽曲の中でもっとも思い入れのある曲でもあります。
この曲を知らない方にはぜひお聴きいただき、また、演奏していただきたいです!

2風紋 / 保科洋

風紋 / 保科洋

引用元: Amazon

作曲・編曲保科洋 / -
演奏時間約7:00

純文学のような風景が見えてくる名曲

1987年の課題曲。
「風紋」とは、風の影響で砂地などにできる紋様(砂紋)のこと。

作曲者の保科洋先生は、このタイトルについて、特に具体的などこかの風紋を描写したわけではない、と語っています。
しかし、序盤のゆったりした箇所を聴いていると(あるいは、演奏していると)、目の前に茫漠とした砂地と、そこに浮かび上がった美しくも虚しい「風紋」が見えてきます。それはまるで純文学の情景として描かれるような風景です。

もしかしたら、この曲がとらえているのは、近代以降の日本人に共通した心象風景なのかもしれません。
曲の中盤以降はテンポが上がり、軽快なリズムに乗せて力強さと哀愁を同時に感じさせる印象的なメロディが歌われていきます。聴いてよし、演奏してよし。まさしく名曲です。

『風紋』は課題曲の人気投票をすると、必ず上位に来る作品で、プロの音楽家からも多くの支持を集めています。また、プロ吹奏楽団がコンサートのプログラムとして取り上げることも多い曲です。
ロングバージョンの「原典版」も存在し、コンクールの自由曲として演奏する団体もあります。課題曲が後に自由曲として演奏されるのは、非常にレアなパターンです。

『復興』、『インテルメッツォ』と並び、保科先生の代表作と言ってよいでしょう!

3さくらのうた / 福田洋介

さくらのうた / 福田洋介

引用元: Amazon

作曲・編曲福田洋介 / -
演奏時間約4:30

桜のトンネルをくぐり抜けて

2012年の課題曲。比較的新しい曲ながら、人気投票では必ず上位に来ます。

平安時代、「花」といえば桜のことでした。それほど昔から日本人に愛されてきた桜は、ただ華やかなだけでなく、「はかなさ」や「別れ」をも連想させるものです。
『さくらのうた』は、桜が持つそんなイメージを見事に表現した和風テイストのメロディと、桜が風に揺れたり、花びらが舞い落ちたりする様子を思わせる可憐なリズムで、聴く者の心を強く引きつけます。

自分で演奏していても、つい感傷に浸ってしまう、そんな曲です。
以前、作曲者の福田洋介さんとこの曲について語り合ったとき、モデルの一つになっているのは福田さんが生まれ育った東京・杉並区の善福寺川公園の桜だと聞きました。

実は、オザワ部長も大学卒業後に5年ほど善福寺川公園のすぐ近くに住んでいたことがあります。
川沿いに桜並木があり、枝が川面に向かって斜めに伸びています。そして、春になると、満開の桜が川へなだれ落ちる滝のように見えます。川沿いの遊歩道を歩くと、その桜の枝の下をくぐり抜ける形になります。まるで桜のトンネルのようです。

『さくらのうた』を聴いた人は、それぞれが自分の思い出の中にある桜を想像することでしょう。
オザワ部長は、いつもこの曲のモデルとなった桜のトンネルを思い出し、それとともに当時感じていた青春の鬱屈、意味もなく切ない気持ち、好きだった人のことなどがありありと胸に迫ってきます。

なお、『さくらのうた』は後にアンサンブル版やピアノソロ版なども作られ、目黒恵梨さんによって歌詞もつけられました。いかに『さくらのうた』が多くの人に愛される名曲であるかがわかります。

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