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1位オリンポスの果実
若者の精神的且つ物的な貧困
1986年。東京都で日雇い港湾荷役に従事する中卒の19歳の青年、北町貫太の物語である。彼は中卒で社会に出たため、自分の学歴にコンプレックスを抱いており、そのコンプレックスを解消するために毎日日雇い港湾荷役に励み金を稼ぐが、その稼ぎは全て風俗のソープ代に消えてしまう空しい生活を送り続けていたのだった。
しかし19歳の誕生日を迎えた夏に日下部という同い年の九州出身の専門学生と日雇い港湾荷役の現場で知り合い、その彼と友情が芽生え始める。そんな日下部との友情も持ち前の短気な性格から壊れたり、果ては彼女のいる日下部に嫉妬したりする貫太の心象風景が詳細に綴られている。それが非常に面白いのでこの作品をお勧めしたい。
戦前昭和のエリート大学生が体験したプラトニックな恋とオリンピック
1932年。ロサンゼルスオリンピックにボートの代表選手として出場した大学生の19歳の青年の物語である。太平洋戦争の開戦までは日本からアメリカへ旅行するにあたっては飛行機に乗って行くのではなく大型船舶に乗船して太平洋を横断していたので、このオリンポスの果実では日本からアメリカに渡るまでの船舶の様子から物語がスタートしている。
この船の中で主人公の青年は高知県出身の女学校の走り高跳びの代表選手に恋をするのだった。この作品ではその片思いの愛情がただ純粋に煌びやかに描き通されており、スポーツ小説というよりも片思いの恋愛小説として読んでみた方が楽しめるだろう。