1分でわかる「私小説」
作者の内面に潜む心情や人生観がにじみ出る私小説

蒲団・重右衛門の最後
(引用元: Amazon)
私小説(わたくししょうせつ・ししょうせつ)とは、著者が直接体験した事柄をもとに書かれたフィクション小説のこと。小説のジャンルとして始まったのは、1907年に登場した田山花袋の『蒲団』がはじまりとされ、そこから100年以上次々と発表されています。私小説は、出生から現在を描写している自伝的要素も色濃く出ているため、ノンフィクション作品のようなリアリティのある面白さが魅力。喜怒哀楽が豊かに表現されていることから、時には感情移入をしてしまう読者も多く見受けられます。特にドラマや映画など映像化された私小説は知名度も高く、改めて原作を読んでみたいと思う人が出るほど評判になっています。
若者の精神的且つ物的な貧困
1986年。東京都で日雇い港湾荷役に従事する中卒の19歳の青年、北町貫太の物語である。彼は中卒で社会に出たため、自分の学歴にコンプレックスを抱いており、そのコンプレックスを解消するために毎日日雇い港湾荷役に励み金を稼ぐが、その稼ぎは全て風俗のソープ代に消えてしまう空しい生活を送り続けていたのだった。
しかし19歳の誕生日を迎えた夏に日下部という同い年の九州出身の専門学生と日雇い港湾荷役の現場で知り合い、その彼と友情が芽生え始める。そんな日下部との友情も持ち前の短気な性格から壊れたり、果ては彼女のいる日下部に嫉妬したりする貫太の心象風景が詳細に綴られている。それが非常に面白いのでこの作品をお勧めしたい。[続きを読む]
オリンポス健二さん
1位(100点)の評価
私小説を超える世界観に圧倒
私小説を読んで感情的になることはあまりありませんでしたが、この本がなぜか感情移入をしてしまいました。そのくらい世界観が確立されています。
随所に作者の矜持を感じるが、それが逆に作品に良い影響を与えていると思います。
D線上のマニアさん
1位(100点)の評価
芥川賞受賞の本格私小説
現代の私小説の作家と言えば西村賢太はすぐに出てくる気がするが、やはりお勧めしたくなる。作家の人生を疑似体験出来る作品で、性風俗の体験など普通なら隠したいところまで書いてあるのがさすがだと思う。
ダリアさん
1位(100点)の評価