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瀧津 孝さんの「戦争映画ランキング」

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更新日: 2020/10/14
瀧津 孝

作家・日本史激動期研究家

瀧津 孝

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まえがき

戦争映画と言えば、主人公が戦場で味わう理不尽かつ悲惨な経験を通じて、戦争の不条理さ、無意味さ、醜さを観客に訴える物語だと思っている人があまりに多いのですが、私から見ればこれらの作品は戦場を舞台にしたヒューマンドラマか反戦ドラマです。

私が考える戦争映画とは、史実の戦い、または戦場において、敵味方双方の間で繰り広げられるスリリングな頭脳戦を描いたエンターテインメント作品、とでもなるでしょうか。そんな個人的定義のもと、第二次世界大戦を題材とするノンフィクションに近い戦争映画の傑作三本をピックアップしました。

ランキング結果

1大脱走

大脱走

引用元: Amazon

制作年1963年
上映時間172分
監督ジョン・スタージェス
メインキャストスティーブ・マックイーン(ヒルツ)、ジェームズ・ガーナー(ヘンドリー)、ジェームズ・ドナルド(ラムゼイ)、リチャード・アッテンボロー(バートレット)、ゴードン・ジャクソン(マクドナルド)ほか
主題歌・挿入歌-
公式サイト-

第一級の戦争映画にして娯楽大作

厳重に警備された捕虜収容所からの集団脱走を計画する連合軍将兵と、それを阻止しようとするドイツ軍との駆け引きは、これってホントにあった話なの?と疑ってしまうほど波瀾万丈。脱走後どんな手を使って敵国を通過し、味方陣営にたどり着くかという方法も機知とバラエティーに富んでハラハラの連続です。

米軍捕虜・ヒルツ(スティーブ・マックウィーン)がスイス国境の柵をオートバイで飛び越えるシーンに感化され、自転車で起伏のある場所を走る時は前輪を持ち上げて進もうとする癖が未だに抜けません。いやそれなら、車を運転するよりも、普段から自転車に乗るのが好きで愛用してるのは、英軍捕虜・セジウィック(ジェームズ・コバーン)が盗んだ自転車で敵の目をかいくぐり悠々と進む姿に、何とも言えない格好良さを感じたのが原体験になってるのかも。

ドイツ軍=悪い敵、というステレオタイプな描かれ方ではなく、ヒトラーやナチス党に忠誠を誓う親衛隊とは一線を画して収容所警備にあたるドイツ空軍将兵の微妙な立場までうまく表現されています。エンディングでヒルツが独房に入れられるシーンで、敵である彼に対して好意とも同情ともつかない不思議な感情を抱くドイツ軍兵士の無言の演出が大好き!

2史上最大の作戦

史上最大の作戦

引用元: Amazon

制作年1962年
上映時間178分
監督ケン・アナキン、ベルンハルト・ヴィッキ、アンドリュー・マートン
メインキャストジョン・ウェイン(ベンジャミン・バンダーボルト中佐)、ロバート・ライアン(ジェームズ・M・ギャビン准将)、スティーブ・フォレスト(ハーディング大尉)、トム・トライオン(ウィルソン中尉)、リチャード・ベイマー(“ダッチ”アーサー・シュルツ一等兵)ほか
主題歌・挿入歌-
公式サイト-

この頭脳戦こそ戦争映画の醍醐味

これだけ大規模な戦闘の描写を、現代のようにCGなど一切使わず、リアルな人と物だけで撮影されたことにまず驚きです。さらに、当時の欧米トップスターが勢揃いした正真正銘のオールキャスト。連合国とドイツとの頭脳戦描写は息つく間を与えず、将軍などの上級指揮官だけでなく中級、下級指揮官、さらには一兵士、一市民にまつわる様々なエピソードが、時にはヒロイックに、時にはユニークに、時には感動的に挿入され、178分もの上映時間を全く飽きることなく見終えられます。

連合軍とドイツ軍の指揮官たちは、それぞれ相手の出方を様々に予測し、あらん限りの知恵を尽くして任務を遂行しようとしますが、作戦や予定といったものは、必ずしもその通りに進みません。想定外の出来事によって思わぬ事態を招くことがあるのは現代でも変わらず、「危機管理」の点で私たちにも大きな示唆を与えてくれます。

迎撃が思うに任せず歯噛みするドイツ陸軍西部軍参謀総長・ブルーメントリット大将(クルト・ユルゲンス)のセリフは象徴的で、名シーンの一つです。「ドイツは負けるぞ。偉大なる総統(ヒトラー)が睡眠薬で寝ていて起こせないからだ。我々は歴史の証人になる。後世の歴史家にとって信じがたい出来事の。だが事実なのだ」。

3トラ・トラ・トラ!

トラ・トラ・トラ!

引用元: Amazon

制作年1970年
上映時間144分
監督リチャード・フライシャー、舛田利雄、深作欣二
メインキャストマーティン・バルサム(ハズバンド・キンメル海軍大将)、山村聡(山本五十六海軍中将)、ジョゼフ・コットン(ヘンリー・スチムソン陸軍長官)、三橋達也(源田實海軍中佐)、E・G・マーシャル(ブラットン陸軍大佐)ほか
主題歌・挿入歌-
公式サイト-

もっと評価されていい戦争映画の名作

第二次世界大戦が勃発して二年以上経過した真珠湾攻撃直前の段階でも、戦艦を航空機だけで沈めるのは軍事的に不可能だと考えられていました。しかも日本軍航空部隊が目標とする米主力艦隊の停泊地は、多数の戦闘機と鉄壁の対空防御を備え、魚雷が使えないほど水深が浅いハワイ・真珠湾。

当時の誰が考えても非常識で無茶な作戦を遂行すべく、試行錯誤し、密かに猛訓練を重ねる日本側と、暗号傍受で危険を察知しながら空回りするアメリカ側の人間模様がドキュメンタリータッチで交互に描かれ、後半は一転して大スペクタクル戦闘シーンの連続となって目が釘付けになります。

公開当時、日本の一部マスコミは「戦争の悲惨さを伝えない駄作」とこき下ろしましたが、それは戦争映画の認識の相違。制作の主導権はアメリカの映画会社が握る〝日米合作〟だったものの、両国の動きが史実を元に公平に描かれている点は大いに評価しなけれなりません。しかし、米軍が日本軍に叩きのめされる内容のせいでアメリカでは全くヒットせず、六年後に制作される「ミッドウェイ」では日米主力艦隊が激突した著名な大海戦を題材にしながら、日米合作ではなくアメリカ単独制作となり、米軍視点に重きを置く内容とされたのは、残念な余波でもありました。

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