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2位鉄鼠の檻(小説)
引用元: Amazon
『鉄鼠の檻』(てっそのおり)は、日本の小説家・推理作家である京極夏彦の長編推理小説・妖怪小説。百鬼夜行シリーズ第四弾である。第9回山本周五郎賞の候補作となった。
限定された状況下で起きる事件が、一気に解決される爽快感があります。
一般的に『京極堂シリーズ』と呼ばれるシリーズにおいて、推理小説らしい雰囲気がある本作は、珍しい部類に入るかも知れません。
雪に閉ざされた禅寺で起きる殺人事件と、その背景にある壮大な物語と人間の業が絶妙な配分で描かれており、読者を飽きさせません。
『姑獲鳥の夏』との関連もあり、「この人そういえば」と読み返したくなる配置も見事です。
読後感が何とも言えない作品もある中で、この作品の結末には救いが用意されている点も注目したいところです。
3位嗤う伊右衛門(小説)
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『嗤う伊右衛門』(わらういえもん)は、京極夏彦による日本の小説。第25回泉鏡花文学賞受賞作、第118回直木賞候補作。四代目 鶴屋南北の「東海道四谷怪談」と実録小説「四谷雑談集」を下敷きに執筆された、江戸怪談シリーズの第1弾。『このミステリーがすごい!』で第8位に、『週刊文春ミステリーベスト10』で第9位にランクインした。2003年に蜷川幸雄監督、唐沢寿明・小雪主演で映画化され、しかくの作画で漫画化もされた。
美しい、とにかく美しい。新たな切り口で語られる『四谷怪談』です。
類型的な『四谷怪談』と決定的に違うところは、民谷伊右衛門とお岩との関係です。
それはおどろおどろしく恐ろしい『四谷怪談』とは、まったく解釈が異なるのです。
『巷説百物語』の主人公である又市が狂言回しとして出てきますが、彼の口で語られる二人の関係性は、まるで切ないラブストーリーでも読んでいるかのようです。
互いに互いを思い過ぎてすれ違い、悲劇的な結末へと共に手を取って駆け出していくような物語は、涙なくしては読めませんでした。
ラストシーンは、いつ読み返しても泣いてしまいます。どうして二人で幸せになる道を選ばなかったのか、とつい思ってしまいますが、そうではないからこそ彼らの生き様は美しいのだと思います。
いつもと違う京極夏彦を読みたいなら、これです!
豆腐を持っている以外は、特に何をするわけでも無い「豆腐小僧」という妖怪が主人公です。
深田恭子さんを豆腐小僧の声優として起用した、アニメ作品もあります。そちらも大変に可愛らしく、「そうそう、豆腐小僧ってこんな感じ!」と思わせてくれる良作でした。
いつも陰鬱な印象のある京極夏彦作品において、この作品は特殊とも言えます。
とにかく可愛い! 色々な妖怪と出会い、成長し、けれど本質は変わらない(妖怪ですので変われないのですが)点が良いのです。
ほんわかしたい気分の時に読みたくなる一冊です。
5位巷説百物語
引用元: Amazon
『巷説百物語』(こうせつひゃくものがたり)は、角川書店から刊行されている京極夏彦の妖怪時代小説集。「巷説百物語シリーズ」の第1作目。1997年より角川書店が発行する妖怪マガジン『怪』創刊号より作品の連載が開始され、1999年の第伍号まで連載されたものを収録している。
勧善懲悪とも言い切れないけれど、何とも魅力的な又市がいます。
京極夏彦氏が直木賞を受賞した『後巷説百物語』のシリーズですが、小悪党が様々な事件を怪奇に見立てて解決していくのが、痛快でもあります。
ただ、京極作品の多くに通底する人の業というものは、本作品でもそこここにちりばめられており、それが深みを与えているように思います。
主人公の又市が、多くの謎を孕んで飄々としているのがまたいいのです。そして先生と呼ばれる語り部の山岡百介は、読者の代わりのように彼らと関わっていきます。
単品でも読めますが、シリーズ全てを読むと、さらに面白い作品です。
絡みあう感情と人間関係、美と醜、正気と狂気が対照的に描かれている点です。
京極堂を初めとしたメインメンバーの大半が、本作品の中に登場する事件に関わっています。
命とは、美とは、正気とは、幸福とは、愛とは、という問いかけに対して、対照的な事象や主張が出てきて、それらが一つの結末に向かって収斂していく様子は圧巻の一言。
それらの収斂を経たラストシーンが、それまでのプロセスゆえにとても美しいのです。
傍から見れば、ただの狂気。ですがそれは、それまでのプロセスを読んできた読者にとって、確かに幸福の一形態なのだろうと感じ、哀しさも同時に感じるという読後感は、この作品独特のものではないでしょうか。