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杉村 啓さんの「刺身醤油ランキング」

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更新日: 2021/02/03
杉村 啓

醤油・日本酒研究家/グルメ漫画研究家

杉村 啓

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まえがき

「刺身醤油」には、こうでなければならないという決まりはありません。「濃口醤油」や「淡口醤油」は、こういう造り方をしなければならないとJAS法で決まっているのですが、「刺身醤油」は法律上でも決まりはないのです。

ではいったい「刺身醤油」の正体は何なのでしょうか。
それは、各メーカーが「こういう味わいならお刺身に合う」とした醤油なのです。

日本は南北に細長く、各地で獲れる魚や食べ方が異なります。魚が違えば刺身に合う醤油も変化するのは当然と言えるかもしれません。そのため、刺身醤油は同じような名前でもさまざまな種類があるのです。具体的には「さいしこみ醤油」をベースにしたものや、「たまり醤油」ベース、だし醤油や甘くした醤油などですね。

基本的には以下を参考に食べる魚に応じて醤油を変えることがおすすめです。

マグロなど赤身:さいしこみ醤油など
淡泊な白身:淡口醤油やポン酢など
脂ののった魚:たまり醤油
活け締め系:甘みのある醤油

濃口醤油やだし醤油は万能系です。どの刺身にもばっちり合います。
ただ、そうなってしまうと選ぶ範囲が広がりすぎてしまうので、今回は商品名に「さしみ醤油」とついているものの中から紹介していきます。

ランキング結果

全国どこでも手に入る! 空気に触れない構造もうれしいさいしこみ醤油

とりあえずこれがあれば間違いない、というのがこの「いつでも新鮮 おさしみ生しょうゆ」です。

この醤油はラベルに「二段熟成」と書かれています。これは「さいしこみ醤油」のことを表しています。一度発酵させて醤油を造り、その醤油を塩水の代わりにしてもう一度醤油を造る。再び仕込むので「再仕込み」醤油なのですが、定義がわかりにくいという声も多かったので、二回熟成させている「二段熟成」という表記になっています。

原材料も発酵期間も手間もすべて2倍かかるという、非常に贅沢な造りをしています。通常の醤油2つ分の原材料がつぎ込まれている分、旨みが強いのが特徴です。旨みが強いと、その旨みが塩味をつつみこんでくれるため、口当たりがまろやかにもなります。

この「いつでも新鮮 おさしみ生しょうゆ」は全国で販売されることを考えてか、バランスが良く、旨みも強すぎず、でも濃口醤油よりも強く、それでいて口当たりもまろやかです。マグロなどの赤身にも合いますし、他の刺身にもそのバランスの良さでばっちりと合わせてくれます。空気に触れないボトルを採用しているため、味が変化しにくいのもポイント。とにかくこれ一本があれば、とりあえずはいける万能のさしみ醤油です。

九州の甘口さしみ醤油の大定番! 甘い刺身醤油ならこの一本

九州の醤油は甘い、ということを聞いたことがある人も多いでしょう。
なぜ甘く進化していったのかの理由のひとつに、刺身が密接に関わっています。

簡単にいうと、九州の、特に沿岸部では魚を極力新鮮なまま刺身で食べる文化があるためです。魚は締めると、一度死後硬直をおこして固くなり、硬直が解けるとだんだん柔らかく、旨みが増えていきます。逆にいうと、極力新鮮な、締めたての魚は旨みが少ないのです。

その少ない旨みを、つける醤油の方で補うように進化していったのが九州の甘い醤油です。醤油に旨みや甘みを加えることで、口に入れたときの刺身の旨みを補うようにしたのです。

そういった九州の甘い醤油の中でも、定番中の定番と言えるのがこの「あまくちさしみ」。濃口醤油にとろっとした甘みを加えています。

かなりしっかりとした甘さなのですが、旨みもしっかりとあります。塩味の角がたっていないので、意外と料理にも応用できます。活け締め系の刺身にぜひつけてみてください。

なお、同じフンドーキンから販売されている「あまくておいしいさしみ醤油」もおすすめです。こちらは空気に触れない容器に入っているのもポイントです。

強いコクと旨み、ほのかな甘みを持つ使いやすいたまり醤油

「生さしみ溜」は「たまり醤油」という種類の醤油です。
通常の濃口醤油は大豆と小麦を半々で造るのですが、たまり醤油はほぼ大豆のみ、小麦は全く使わないか1割ほどだけで造ります。大豆は発酵すると旨みに、小麦は甘みになるため、非常に濃厚な旨みを持った醤油になります。

平均的な醤油では、旨みの多さはたまり醤油>さいしこみ醤油>濃口醤油と覚えておくといいでしょう。

東海地方では、このたまり醤油を使って刺身を食べるため、「さしみたまり」と言われたりします。

「生さしみ溜」はこのたまり醤油を、火入れ(加熱殺菌)せずに、空気に触れない容器に詰めたものです。火入れをしていない分、香りが控えめで、さらりとした口当たりに仕上がっています。逆に、東海地方の濃厚な旨みを持った「たまり」が欲しい人には少し物足りなさを感じさせるかもしれません。

強いコクと旨み、そしてほのかな甘みで使いやすいたまり醤油といえるでしょう。たまり醤油の刺身醤油に興味を持っている人が初めて使う醤油にもぴったりの醤油です。

とことん甘い醤油ならこれ! 鹿児島伝統のとろみのある甘い刺身醤油

九州では甘い醤油が好まれ、刺身醤油も甘いものがあります。
実は、九州の中でもさらに地域によって甘さが異なるのです。

一般的な傾向としては、南になればなるほど甘くなると考えるといいでしょう。例外として長崎の方でもやや甘さが強くなります。

これは砂糖の普及率に関連しています。貴重品だった砂糖は、江戸時代の当初は長崎の出島の貿易で、後に薩摩藩が砂糖の生産で大きく財を成します。

つまり、貴重品であっても、長崎や鹿児島では比較的砂糖は手に入りやすかったのです。そのため、ごちそうであればあるほど砂糖をたくさん使うようになりました。貴重な砂糖をたっぷり使うことで、もてなしの心を表したのですね。

その傾向は現代にも残っていて、長崎や鹿児島の郷土料理は甘い味付けが多くなっています。そして、醤油もそれに合わせて甘みの強いものが好まれました。そうやって、鹿児島の醤油はどんどん甘い方向に進化していったのです。

その鹿児島伝統の、とことん甘い刺身醤油がこの「さしみ醤油」です。まるでタレのようなとろみのある、こってりとした甘さは九州の他の地域ではなかなかない甘さです。でも、この甘さがとてもクセになるのですね。

重厚感のある、とことん甘い醤油を味わってみたい人はぜひこの醤油を買ってみてください。

お刺身にワンプッシュ!減塩にもなる刺身醤油

刺身に醤油をつけるとき、どうしても難しいのは適量つけることです。つけすぎると塩分過多になるのではとも思いますよね。

そこで使いたいのがスプレー式です。シュッと一吹きすれば全体にまんべんなく醤油が広がります。そのため、普通につけるよりも少ない量で、しっかりと満足できる味わいになるのです。いつもと同じ味わいで減塩ができるのですから、これほど便利なものはありません。

そんなスプレー式を採用した刺身醤油が、「お刺身用 霧醤(きりじゃん)」です。

中に入っているのは「甘露醤油」。これはさいしこみ醤油のことを表しています。もともと、さいしこみ醤油は山口県の柳井(当時は岩国藩)で誕生したのですが、藩主にそれを献上したところ、「甘露、甘露(おいしい)」と絶賛されたところから甘露醤油と呼ばれるようにもなりました。

霧醤の中に入っている甘露醤油は、その伝統的なさいしこみ醤油に、さらに若干甘みをつけています。口に含んだときに「甘いっ」と感じるようなほどではなく、じんわりとした甘みなので、甘い醤油が苦手という人もそれほど気にならないぐらいの甘さです。

一度使うと便利さで手放せなくなるスプレー式醤油で、刺身を食べてみてください。

あとがき

刺身は新鮮な魚ほど良いというイメージがありますが、厳密に言うとそうではありません。魚はきちんと締めると次のような変化を起こします。

・締める→死後硬直→死後硬直が解けていく→熟成→腐敗

ここに食感と、旨みがどうなるかを加えるとこうなります。

・締める   →死後硬直→死後硬直が解けていく→熟成  →腐敗
・コリコリ食感→ 固い →柔らかくなっていく →柔らかい→グズグズ
・旨み少   →旨み少 →旨み増えていく   →旨み多い→食べられない

関東では熟成に入った魚を食べます。柔らかく旨みが多いため、醤油に甘みを加えたりする必要はありません。濃口醤油を使います。

九州や日本海側などでは、締めた直後の魚を食べます。コリコリ食感ですが、旨みは多くありません。そこで、つける醤油は旨みが多かったり、甘みを足したものが好まれます。これが九州のさしみ醤油です。

東海地方では、他の地域で濃口醤油を使うようになっても、昔からたまり醤油が使われていました。刺身にもたまり醤油を使う文化があるので、「さしみたまり」が残っていたのです。

このように地域によって「刺身醤油」の中身が違うのですが、食べる魚や食べ方によって使い分けると楽しくなりますよ。

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