1分でわかる「小津安二郎」
こだわりの強い映画監督「小津安二郎」
「小津安二郎」は1903年生まれ東京都出身の映画監督。1927年に時代劇『懺悔の刃』で映画監督デビューを果たします。グラスの中の液体とグラスの高さを揃えるなどこだわりの強い監督でした。ちなみに、1998年から晩年を過ごした蓼科高原で「小津安二郎記念・蓼科高原映画祭」が開催されるほど、その作品は多くの人から愛されています。
「小津安二郎」の代表作
父と娘について描いた『晩春』(1949)。この作品は、その深すぎる父娘の愛によって、小津安二郎作品の中でも特に議論の多い映画と言われています。その後も、娘の結婚をテーマにしたホームドラマ『麦秋』(1951)や、自身の代表作と言われている『東京物語』(1953年)、自作の人情劇をリメイクした『浮草』(1959年)、遺作と言われている『秋刀魚の味』(1962年)といった作品を次々と発表しました。
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現在では当たり前になっている家族像
広島県の尾道に暮らす周吉と妻とみが東京で開業医をしている長男・幸一の家を久方振りに訪ねる。その夜、長女の志げと戦死した次男の妻・紀子も加わり、一家団欒とした時間を過ごす。しかし翌日、幸一は急患のために忙しくなり、家でくつろぐ周吉夫婦を追い出す。美容院を営む志げの家へ行くが、志げも多忙のため両親をほったらかしに。義理の娘である紀子は、子供たちに構ってもらえず寂しい思いをする周吉夫婦を慰めて東京案内する。ところが満足した状態で周吉夫婦は帰郷するも、とみが危篤状態に。子供たちが尾道に到着した未明にとみは死去した。とみの葬儀が終わったあとは、次女の京子と次男の妻である紀子以外はそそくさと帰ってしまう。周吉は実の子よりも優しくしてくれた紀子に感謝を伝え、誰もいなくなった家で一人静かな時を過ごす。
今は核家族が当たり前となっているので、ここで描かれているような実家とのつながりが希薄な家族はわりとどこでもありそうに感じました。これが公開されたのは1953年と終戦まもない頃でしたので、当時の人は映画で描かれているような家族像は目新しく感じたのではないかと思います。それと現在の映画の演出手法とは違って、役者さんが台詞を言うときに感情入れずにカメラに向かって話すのが印象的でした。悪く言うと大根役者、しかしこのような撮り方をすることで独特の落ち着いた雰囲気が生まれ、セリフのひとつひとつに重みが増す気がします。それから、紀子以外の登場人物へ強いリアリティも覚えました。自分の子供と楽しく過ごしたい両親、実家よりも自分の家庭を優先したい子供たち、どちらにも共感できます。紀子に関しては謎という感情でしたが、義理の両親にも温かく接する優しさは素晴らしいと思います。[続きを読む]
井森さん
1位(100点)の評価
不朽の名作
尾道に住む夫婦が東京にいる子供たちのいる家を訪れるのを通じて、家族の絆や夫婦と子供、老いと死や人間の一生を冷徹な視線で描いたヒューマンドラマです。せっかく尾道からはるばる来た両親を多忙を理由にあしらい、厄介者扱いする長男と長女がひどい。でも戦死した次男の妻の紀子さんは最初から最後まで優しく接してくれました。しかし、それぞれの立場があるっていうのもわかるので、一概に長男と長女は悪とも言い切れませんでした。全体的に(特に前半部分)スローテンポでしたが、飽きることなく最後まで見ることができます。とくに後半部分は、実の子供に冷たく扱われている両親の本音や、実の両親でないのに主人公夫婦に優しく接してくれる紀子の本音が明かされ、心に来る重みみたいなものを感じました。この作品が海外でも高い評価を受け、現在も色褪せない名作とされているのも納得してしまいます。[続きを読む]
ロビンさん
1位(100点)の評価