ランキング結果をSNSでシェアしよう
Twitterでシェアまえがき
しかしながら、韓国映画が勢いづいたのはここ30年ぐらいの歴史であることをご存知だろうか?
韓国映画ベストテンを作ると分かるのですが、1990年代以前の韓国映画を挙げられる人はそうそういないだろう。もちろん私もその一人だ。韓国映画が勢いづいたの始まりとも言える1980年代韓国ニュー・ウェーブの作品はまだ観たことはない。90年代に入り、386世代の監督が『JSA(カン・ジェギ)』、『殺人の追憶(ポン・ジュノ)』大暴れした頃しか知らない。
だが、ここ数十年の韓国映画のパワフルさについてはミーハーながら語りたい。
というわけで私の好きな韓国映画について語ろうと思う。
ランキング結果
1位パラサイト 半地下の家族
引用元: Amazon
『続・夕陽のガンマン』華麗なる華麗なるアレンジ
セルジオ・レオーネの名作『続・夕陽のガンマン』をアレンジする。こんな無茶苦茶な企画はないでしょう。セルジオ・レオーネが築き上げた豊穣な時間という要素をどうするのだろうか?
この作品はその要素を完全に無視しながら、善人、悪人、変人三人の魅力を引き出し爆走しまくってみせた。刺身には醤油でしょと言わんばかりに傑作のお供として登場するソン・ガンホがこれまたお茶目な作品だ。
3位バーニング 劇場版
引用元: Amazon
『バーニング 劇場版』(バーニング げきじょうばん、原題:버닝)は、イ・チャンドン監督による2018年公開の韓国のミステリ・ドラマ映画。村上春樹の短編小説『納屋を焼く』を原作としており、ユ・アイン、スティーヴン・ユァン、チョン・ジョンソらが出演。第71回カンヌ国際映画祭のコンペティション部門で上映され、パルム・ドールを争った。第91回アカデミー賞外国語映画賞には韓国代表作として出品され、同国史上初めて最終選考9作品に残った。
ギャッツビーになれなかった者は...
村上春樹の『納屋を焼く』はミステリーものにおけるヒントだけを散りばめて終わらせてしまう《起》だけの物語だった。それをイ・チャンドンが2時間半近い時間かけて描くのだが、できあがったものはこれまた謎を散りばめただけの物語だった。
しかし、じっくりと映画を観察しているとこれはギャッツビーになれなかった者の渇望を描いていることが分かる。シティーボーイに憧れる者の前に現れた裕福な男は、悪意なく、主人公のささやかな幸せを奪っていく。恋人や妄想の猫までも。
GREAT HUNGERに平伏す男の渇望をじっくりコトコト煮込んだ本作は、『パラサイト 半地下の家族』と同じテーマを扱っているものの全く違った印象を受ける。『パラサイト 半地下の家族』がマッコリならば、本作は韓国の高級ウイスキーといった感じに。
このスノッブ感が村上春樹の世界を見事に再現しており、村上春樹映画としても抜群の完成度でした。
『パラサイト 半地下の家族』の元ネタ
韓国映画史は1980年代を境に断絶されているのだが、1980年代以前の韓国映画の中から傑作を選ぶとしたらキム・ギヨンの『下女』を選びたい。
あの『パラサイト 半地下の家族』の元ネタです。そして家侵略モノの代表とも言えるジョゼフ・ロージーの『召使』よりも先に作られている作品だ。
これまた階段の使い方が素晴らしい。
前半、息子が松葉杖を使う娘に嫌がらせをする。お菓子の袋を持って階段上に登り、「やーい、やーい、お前はここまで来れないだろう。」といじめる。母親は制止しようとするのだが、父親は「やめなさい。甘やかすな。」と言う。娘は、一生懸命階段を登るが、遂には倒れてしまい、泣き始める。少年が駆け寄り、ごめんよと袋を差し出すと、それを彼女が奪い取り、その泣きは嘘であったことが発覚する。この騙しは映画を象徴する。
ブルジョワの召使いとして現れた魔性の女が、段々と家を乗っ取っていく未来を予感させるのだ。そこで効果的に使われるのはピアノである。ピアノの先生である、父はピアノを簡単には使わせない。選ばれし者のみが触れることのできるものとして機能する。しかし、後半にいくに従って、「お金のためにピアノを弾かなくてはならない。私に教えさせてくれ。」と叫ぶようになるのだ。下女はマリオネットのように家族を制圧し、見えざる意図によってこのブルジョワはコントロールできない自己に苦しむのです。
駄話のプロフェッショナル ホン・サンス
ホン・サンスは毎回、女々しい自分の内面を映画に投影し、一見すると駄話を垂れ流しているだけなのに、観ているうちに世界へ引き込まれてしまう。
川辺のホテル。詩人の男は、息子との再会を待っているが待てども待てどもやって来ない。退屈過ぎて、詩人は寝てしまう。そして、起きると目の前に美女二人白銀の空間にぽつんと立っていた。一発で惚れ込んだ詩人の、美女を追い回す旅が始まる。
本作は、空間の妙が素晴らしい作品だ。父と息子たちは、ホテルのカフェの壁越しに座っていて、互いに気づかない。そして、父が庭で美女をナンパしている時、初めて息子たちの視界に入るのだが、息子たちは会話に夢中で気づかない。そして、美女に会いたいモード全開な父は、息子たちに悟られないように、「アッチでコーヒー呑もう」と美女が向かった先に誘導しようとしたり、美女にあげられなかったヌイグルミを息子に仕方なしにあげたりする。
どこか愛らしい男のしょうもない行動に翻弄されっぱなしな作品だ。
6位新感染 ファイナル・エクスプレス
引用元: Amazon
銃を使わない、ゾンビの概念がない
日常に押し寄せるパンデミックとは、庶民にとって銃でどうこうできる問題ではなかったり、そもそも概念がないのでパニックに陥る。
コロナ禍だからこそこの作品の普遍的な人間の汚さから学ぶものがあります。仕事に忙しすぎて娘にも他人にも関心がなくなってしまった男は、社会がゾンビパンデミックで大惨事になっていることも知らずに地獄行きの新幹線に乗ってしまう。直線ルート袋の鼠な空間で、同じく心が汚れてしまった人を目の当たりにし、生死をかけた戦いを通じて男は自分の生き様を猛省する。
ロメロ的社会派ゾンビ映画でありながら、銃を用いずスタイリッシュなアクションと、緊張感溢れる脱出劇にエンタメとしても120%満足できる代物と言えよう。
7位シークレット・サンシャイン
引用元: Amazon
『シークレット・サンシャイン』(原題:밀양)は、2007年公開の韓国映画。監督、脚本および製作はイ・チャンドン。イ・チョンジュンの小説を原作としている。ロケは大韓民国の密陽市で行われた。第60回カンヌ国際映画祭コンペティション部門出品作品。
神は存在するのか?
神は人を救えるのだろうか?
祈りは人を救えるのだろうか?
イ・チャンドンの鋭い視線のもと描かれる極限の映画。
息子を奪われた母親は、祈れども神を信じても傷は言えない。
そんな彼女の受難と裏腹に後光が差すほどの陽光が映画を包み込む。
こんなに残酷な映画を私は観たことがない。
8位クロッシング(2008年)
引用元: Amazon
『クロッシング』(朝: 크로싱) は、2008年の韓国映画。 2002年、脱北者25人が中国当局の警備をかいくぐり、北京のスペイン大使館に駆け込んだ事件をモチーフにしており、4年間の企画・製作期間を経て公開された。家族のために薬と食糧を求め北朝鮮を去った父と、父を探しに出た11歳の息子の切ないすれ違いを描く。脱北者問題を取り扱った映画であるため、ロケは中国、モンゴル、韓国にて秘密裏に行われた。公開後、韓国の国会でも試写が行われた。
韓国のオデュッセイア
北朝鮮から薬を求め父は中国に潜入する。しかし、薬は間に合わなかった。孤児となった少年は父をたずねて三千里、決死の中国潜入を試みる。
この韓国のオデュッセイアは、製作が難航し、極秘で完成までこぎつけた作品。その執念ともいえる、あまりに過酷で悲惨な脱出劇に心が痛む。これは高校生、大学生に観て欲しい作品である。
9位タクシー運転⼿ 〜約束は海を越えて〜
引用元: Amazon
制作年 | 2016年 |
---|---|
上映時間 | 137分 |
監督 | チャン・フン |
メインキャスト | ソン・ガンホ(キム・マンソプ)、トーマス・クレッチマン(ピーター)、ユ・ヘジン(ファン・テスル)、リュ・ジュンヨル(ク・ジェシク)、パク・ヒョックォン(チェ記者)、ダニエル・ジョーイ・オルブライト(デイビッド・ジョン) |
主題歌・挿入歌 | - |
公式サイト | http://klockworx-asia.com/taxi-driver/ |
動画配信サービス | U-NEXT:配信中 Amazon Prime Video:配信中 Netflix:配信中 Hulu:なし |
タクシー野郎 突撃一番星
ソン・ガンホのお茶目なロードムービーかと思いきや、突然事態は急変する。隔離された都市で勃発していた思わぬ戦場に巻き込まれたノーテンキなタクシー運転手から段々と笑みが失われていく。
『トラック野郎』ばりにパワフル抱腹絶倒なコメディパートと光州事件と辛辣に見つめたパートとの塩梅が鋭利となっており、韓国映画が得意とするエンタメと社会派のバランス感覚に痺れる一本となっている。
映画史上最もスリリングな髭剃りシーン
ひょこんなことから大統領専属の理髪師になってしまった男のコミカルな日常を描いた作品。
とはいっても誰だって、国のトップを相手するとなると緊張するもの。時は激変の1960~1970年代の韓国故、何かあったら即処刑もの。そんな中で大統領のヒゲを剃るとなると緊張してしまいますね。
ここまで緊張感溢れる髭剃りシーンは後にも先にもないことでしょう。
あとがき
私も、そろそろ未開の1980年代韓国ニュー・ウェーブの作品、例えば『風吹く良き日』や『鯨とり ナドヤカンダ』を挑戦してみないとなと思うばかりです。
今最もパワフルな韓国映画、貴方も挑戦してみてはどうでしょうか?
見えない世界というものがある
著名人は、災害が発生した際に、貧しき者に施しを与える。しかし、そんな善人である富める人ですら、下界は氷山の一角しか見えていない。
ポン・ジュノ監督は格差社会で生じる断絶、と幾重にも重なる上下関係による差別をハラハラドキドキのエンターテイメント、そしてどこまで掘っても底なし沼な考察し甲斐のあるアート性の抜群なバランス感覚で現代社会の問題にメスを入れました。
階段の上から見ると死角だらけだが、下から見ると全てが見える構図を巧みに使った演出は『下女』のアップグレード版として映画ファンの心に焼きつくものをもたらしました。