1分でわかる「小川洋子」
自身の卒論を改良した作品でデビューを果たした「小川洋子」
1962年、岡山県出身の「小川洋子」。結婚を機に本格的に執筆活動を始め、1988年に自身の大学の卒業論文を書き直した作品『揚羽蝶が壊れる時』が、第7回海燕新人文学賞を受賞し作家デビュー。1991年には、妊娠した姉に対する妹の悪意を日記形式の文で綴った『妊娠カレンダー』が第104回芥川賞を受賞しました。この作品はラジオドラマ化されたほか、2005年にアメリカ雑誌『ザ・ニューヨーカー』で英語版が掲載され、海外でも人気を博しています。その後は『薬指の標本』(1994年)や、『ことり』(2012年)など、純文学作家として高い評価を得ている彼女が手がけたノスタルジックな作品は、多くの読者を魅了しています。
発売2ヶ月で100万部を突破した『博士の愛した数式』
2003年に発行された『博士の愛した数式』。80分間しか記憶を持続できない数学博士と、家政婦とその息子の心のふれあいを描いたストーリーはたちまち話題となり、2004年に第55回読売文学賞、第1回本屋大賞を受賞しました。2005年に新潮文庫として文庫化されると、発売2ヶ月で100万部を突破。これは新潮文庫で史上最速記録となりました。
人気作
映画化もされた人気作です。メインとなるのは、80分限定の記憶しかない数学博士、彼の世話をする家政婦、そんな家政婦の息子で阪神タイガースファンの少年の3人。学生時代数学が苦手だった私も、丁寧に解説してくれる博士のおかげで苦もなく読み進めることができました。数式の美しさ、その一端を知った思いです。そんな私と同じように、家政婦の「私」もどんどん数字に対して理解が進んでいきます。なので自分自身と投影させながら物語を見ていました。そして博士から少年に注がれる愛。博士との意思疎通に困っていた「私」を助けたのも、少年への愛でした。少年への愛が分かるシーンが出てくるたびに心がぽわっと暖かくなります。
終始暖かさが横たわった静かで優しいお話。[続きを読む]
リーばいさん
3位(90点)の評価
80分限定の記憶
80分しか記憶することのできない数学者と、家政婦とその息子の交流を描いたお話で、映画化もされたヒット作です。数学の素晴らしさもしれて、人の暖かさを感じることのできる名作。まさか数式を通して人と人との心を通わせ合うことができるだなんて。数学が苦手だった自分にはとても思いつかない発想でした。
思いやる気持ちがいたるところに出てきて、ほっこりできます。
ノック石さん
1位(100点)の評価
最後まで心が温まる
2004年に発行され、第55回読売文学賞と第1回本屋大賞を受賞した作品。交通事故の後遺症によって記憶が80分しか持たない「博士」と、博士のもとにやってきた家政婦で主人公の「私」、主人公の10歳の息子「ルート」との交流を描いたお話です。登場人物のあたたかさに心が動かされ、数学なんて二度とやるかと毛嫌いしていた私が数学をちょっと勉強してみようかなと感じた作品でした。この小説は、主人公が博士の家に派遣されるところから始まります。数学以外のことにほとんど興味を示さないうえに、いきなり靴のサイズを聞いてくる、ひとことで言うと変人な博士に主人公は困惑します。しかし、10歳の息子が家で留守番していると知った際は家に連れてくるように言い、息子の平らな頭を撫でながら「ルート」とあだ名をつけてくれる優しい人でした。そして、もとは赤の他人だった博士、主人公、ルートは過ごしていくうちに親しくなっていきます。たとえ記憶が何度も博士の記憶がリセットされても、また仲良くなります。ストーリーの中では、博士の数字に対するこだわりや、登場人物たちの優しさにあふれるシーンがいくつか登場しますが、私が好きなのはバースデーケーキと野球カードのくだり、完全数の部分です。(ネタバレになるから詳しくは省略します)とくに完全数の場面では私もつい調べてしまいました。最後まで登場人物たちのあたたかみが感じられ、文体もやさしいので、あまり小説になじみない人にもおすすめです。[続きを読む]
シールド乳酸菌さん
1位(100点)の評価