芸術性の高い美しい文章に定評がある小説家「谷崎潤一郎」。今回はそんな彼の書籍にスポットをあて、みなさんの投票をもとに『谷崎潤一郎の人気書籍ランキング』を作成しようと思います。処女作にして代表作でもある『刺青』をはじめ、作者最大の長編作品『細雪』や、小悪魔系少女にとりつかれ、破滅へ向かう男の物語『痴人の愛』、日本人の美の感性について論じた『陰翳礼讃』などの人気作品は果たして何位にランクインするのでしょうか!?あなたが好きな作品も教えてください!
最終更新日: 2020/06/29
このお題は投票により総合ランキングが決定
1886年、東京都出身の「谷崎潤一郎」。1965年にこの世を旅立つまで多数の作品を手がけ、近代日本文学を代表する小説家の一人として、現在も高い評価を得ています。大学在学中に文芸雑誌第2次『新思潮』(1910‐1911年)を創刊し、同誌に発表した『象』や『刺青』(1910年)などの作品が文壇に認められ、作家としての地位を獲得。マゾヒズムや過剰なほどの女性愛が描かれた作品は文学世界に大きな衝撃を与えました。1923年に発生した関東大震災後に関西に移住。それまで西欧的な文章を好んでいましたがこの頃から古典的な日本美に関心を持ち、独自の世界を築いていきました。その後、『細雪』(1936年)や『痴人の愛』(1947年)、『鍵』(1956年)など、数々の代表作を生み出しています。
本ランキングにおける谷崎潤一郎の書籍の投票範囲は、彼が手がける作品です。戯曲や評論・随筆、対談集などの作品にも投票が可能です。ただし、海外の作品を翻訳した文学作品はランキング対象外です。
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1位痴人の愛
2位春琴抄
3位陰翳礼讃
4位刺青
5位瘋癲老人日記
1位痴人の愛
2位春琴抄
3位陰翳礼讃
4位刺青
5位瘋癲老人日記
条件による絞り込み:なし
こんな愛の形もあるのかと思う作品です。
盲目の三味線師匠春琴に仕える佐助。針で目を突き刺して、自らも盲目の世界に入るのです。そこには愛がありました。そこまでしなくても・・・、そこまでできないと思う一方で、そこまでに心から愛することができることに深く感動しました。
2人の間にある愛を超越した繋がりに震える
他人には絶対に理解不能な、愛と呼んで良いかすらわからない強烈な感情を抱く2人の関係性が激しくも美しく綴られている。
何度も映像化されていることもあり、読む者が情景を想像せずにはいられない谷崎の代表作のひとつ。
自己犠牲の伴う最上の愛の形について考えさせられる作品です
才能と美貌を持つ盲目の美少女、春琴と春琴に仕える少年、佐助の物語。類い稀なる才能と美貌を持ってしまったが故に周囲に高慢な態度を取り続ける春琴だが、ある日何者かに熱湯を浴びせられ美しい顔を火傷で失ってしまうという大事件が起こってしまう。
そんな顔を佐吉にみられたくないという春琴の思いを汲んで佐吉は両面を針で突き刺し自らも盲目になり、一生を春琴に捧げるのだが、与えるのみで求めない、自己犠牲のみの愛の形が切なく苦しい程に心情に訴えるのだが、美しい恋愛小説として最上の作品だと思った。
外国に向けて紹介した日本の夢
ミシェル・フーコーはこう語っています。「本当に素晴らしいテキストです。美について語っているテキストがそれ自身美しいことは本当に稀です。美こそまさにこのテキストが語っていることです。しかも、このテキストには美の形そのものがあります。濁り水に差した光のような美が。」本当にその通りだと思います。
手に取るようにわかるリアリティー
題名からして内容が手に取るようにわかります。初めて読んだとき、掲載されていた教科書には漆の椀に入った白米の写真が寄せられていました。それを見たとき、難しいことを考えたり読んだりしなくとも、著者の言いたいことが題名そのまま、すっと腑に落ちる感覚がしました。
谷崎の世界がシンプルにまとまってる
世間から処女作にして傑作・代表作などと称される作品。私もそう思う。谷崎らしい美しい世界観がコンパクトにまとめられている。谷崎作品は結構人を選ぶものが多いと思うが、これはかなり読みやすく、シンプルに美しい描写となっており、初めて読む方にはぜひ一作目としてお勧めしたい作品である。
谷崎文学の原点であり、彼の作品のキーワードが詰まっている
女性の肌や足に対する谷崎の異常なフェティシズムは、初期の作品である刺青にもふんだんに盛り込まれている。
そしてある瞬間から男女の上下関係があっさりと入れ替わってしまうという展開も同様。
若き谷崎がすでに確固たる世界観を確立していたことが伺える。
ゆるやかに流れる日常の景色
刺青にフォーカスしていますが、今のような反社会的な風情はなく、ただ男女の気遣いに彩を成す存在として描かれています。戦後のヤクザ映画で悪いイメージが定着した刺青ですが、本作は刺青を通して通じ合う二人の心持ちを緻密に描いていることに、淡い美しさを感じます。
息子の嫁に欲情する老爺の愚かさを描く
この作品では、息子の嫁に劣情を抱く年老いた男が主人公として登場します。
なんとかして、嫁と性的な交わりを得ようとしますが、嫁にうまくあしらわれる毎日――。
人はこれほどまでに、愚かになれるのか。老人の必死さに笑いをこらえきれないながらも、人間の本質を垣間見ることのできる作品です。
老人の屈折した性をこれでもかこれでもかと突き付けるセンセーショナルな内容に、感情をひどく揺さぶられた
主人公の老人にはある性癖があり、その性癖を満たしてくれる相手がなんと義理の娘(颯子)である。颯子は老人の狂おしい程の屈折した愛情を掌でころがし巧みに誘導し続けるのだが、物語の展開が最後まで目が離せず、一気に読了してしまった。
金銭感覚の精密な描写
庶民の金銭感覚が如実に描かれています。給料が何円、どこに行くのに何円、と細かく記してあることで、当時の金銭感覚が分かります。すると物語中で登場人物が金銭的根拠をもとにどのような感情に浸っているかを想像することができ、登場人物に感情移入して作品をより楽しめるのです。
関東から関西へ
谷崎潤一郎の作品群を二つに分けると、関東地震を起点に、関東・関西の二つに分けられます。その中でも、細雪は関西で書かれた、船場言葉の美しい、日本文学の正統な血縁に当たる小説だと思います。
言わずと知れた代表作
私が初めて読んだ谷崎作品です。
純文学に堅苦しいイメージを持っていましたが、思ったより読みやすく、また内容も「四姉妹の日常」「お見合い」「恋愛」「家族」などがテーマになっていて、気づけばライトノベルの感覚で読破していました。
関西在住なので、自分の知っている場所や、聞きなれた地名が出てくるのも楽しいです。
何度読んでも真意がわからない、複雑すぎる男女関係に頭を抱える
正直何度読んでも登場人物の真意や内面がわからない。
それはそのまま主人公の気持ちでもあると感じる。
とにかくややこしい関係や出来事の連続なので読む方もなかなか大変なのだけれど、いろいろと考えずにはいられない名作であり問題作。
不倫の同性愛というスキャンダラスな設定だけではない深い物語
夫のある身でありながら、美術教室で知り合った年下の女性と同性愛の関係に陥ってしまう既婚女性が主人公。主人公は同性愛の相手の女性に一体何を求めていて、何を与えられ奪われたのだろうと考えるととても深く心に迫るストーリーです。
見られることを想定して書く日記というまるで現代を予言しているかのような内容
長い倦怠期を改善できないでいる性的に不一致な夫婦が主人公。互いに対する欲望や願望を、見られることを意識して日記にしたためるという、まるで現代のブログを予言したかのような設定には目を見張るばかり。夫婦だからこそのエロティシズムってあるのかと考えさせられる1作でもあります。
騙される幸せについて考えさせられる作品です
大学教授をしている男とその助手と教授の妻と娘の物語だが、4人の複雑にもつれあう関係性が悲哀に満ちているが美しくもあります。大学教授の男は日常的に日記をつけていて、妻もまた日記をつけているのだが、お互いに盗み読むという形式を取りながらも実は歪んだ愛情の交換をしていて、第三者の読者側からしても夫婦の密かなやり取りを盗み視ているような気分になり、最後まで展開が読めず、スリルを味わえた。
少年達の間で繰り広げられる性的倒錯シーンに大人でも戸惑う
江戸川乱歩が書いたのかな?と思うくらいダークな作品。
幼い少年少女が主人公というのもまたこの作品のヤバさを引き立てている。
細雪のイメージが強い人とかはかなり裏切られるであろう、谷崎の違う一面が味わえる短編作品。
谷崎の真髄
まさに谷崎といった感じのSM(?)。3人の少年と1人の少女は、子供らしい遊び──ごっこ遊びなどしてはしゃぎ、純粋に楽しさを追求する先に暴力的な快楽をみつける。1人1人の立場とか力関係が、場所によって、あるいは同じ集団の中でも変わっていく様が、子供らしく、人間らしく、読んでいてすごく楽しい。ラストも最高である。また、一つ一つの描写が本当に美しく、難しい言葉遣いが苦手でも結構読みやすい。ただ、谷崎らしすぎて若干気持ち悪いので(そこがいいのだが)、断念してしまう人もいると思う。
性的に不一致な主人公夫婦を軸に理想の性愛を描く
毎夜妻がさめざめと嗚咽を漏らしながら泣いている、というシチュエーションがとても印象的な作品でした。性的に不一致な夫婦が主人公で、二人の心のすれ違いや温度差などを静かに淡々と美しく描かれていきます。男女の関係って努力だけではどうしようもないことがあるのだと静かに分からせてくれる今作が大好きです。
富美子の足
初めて読んだときは衝撃でした。
この時代に「脚フェチ」という概念が存在していたこと、更にそれをオブラートに包むこともなく、生々しく綴られている文章は忘れることができません。
それが下品にならず、むしろ耽美な作品になっているところに魅力を感じます。
特に印象深かったのがヒロインの脚が好きすぎる主人公が「彼女の脚に触りたい。それが叶わないなら彼女の脚に踏まれる床になりたい」と思うシーン。
完全に現代のオタクの思考と一致していて、谷崎潤一郎が一気に好きになった一文です。
いい意味でも悪い意味でもアクが少ない
個人的にはかなり好きな作品。恋愛と“刺激”が適確に表現されていると思う。また、街並みの描写なども読んでいて楽しい。
目隠しをされ、人力車で女の家に通うのだが、一緒になってワクワクできる。その女の“秘密”を暴きたいし、それを知ったところで飽きやしないと思っていたのに、知ってしまえばもう魅力を感じ難くなる。真理だと思う。
以上の通り王道な構成となっており──といっても癖があるが──きれいに纏まっているので、結構オススメ。ただ、物足りなさを感じてしまうかもしれない。
平安時代を舞台に描かれる愛憎劇
美女と名高かった実在の人物を軸に、彼女の周りに群がる男たちのそれぞれの恋愛模様や愛憎劇を美しく描いている作品です。谷崎潤一郎の作品は、ヒロインとなる女性の魅力や色香などと共に、関係を持つ男性の滑稽さや虚しさ、愚かさが描かれていて美しさと残酷さの両方が味わえます。この作品はその代表的な存在だと思います。
学生同士の葛藤に覚える懐かしさ
ただただ、互いの主義主張の違いから議論を吹っ掛けあいぶつかり合う姿に懐かしさを覚える。社会人になると、近年はとかく「空気を読む」ことが要求されますが、純粋に芸術や学問を究める学生二人の討論が、読んでいて心地よく感じられます。
ゾクゾクします
初めて読んだとき、主人公に自分を投影してみると、ゾクゾクしてしまいました。真面目な男が小悪魔的な少女に翻弄されて破滅していくという内容は、特異と思いきや意外と普遍的な設定かもしれません。谷崎潤一郎が敬愛し、参考にもした「源氏物語」にも、幼い少女を自分の理想通りに育てるという設定がありますが、谷崎潤一郎においては少女のファム・ファタール的性質が強まっていると思います。
フェチズム、マゾヒズム、など谷崎潤一郎作品の根底に流れるものが全てここに
自分の理想そのものの少女を手元に引き取り育て上げ、将来は妻にするという多くの男性が描いているであろう願望を美しくもエロティックで、そして残酷に描いたのがこの作品です。西洋人女性へのあこがれ、女性の足への偏愛、愛する女性に振り回されたいというマゾヒズム、など谷崎潤一郎の作品で良く見られるエッセンスが全てと言っていいほどふんだんに散りばめられています。
明治の源氏物語
タイトルが気になって購入した作品です。
冴えない男性が、若い女の子を自分好みに教育させようとする話。源氏物語のようで、しかしながら主人公はありふれた会社員で、それが少しの背徳感を感じさせドキドキしました。
最初はお互い親子か兄妹のような関係だったのが、だんだん男女の仲に発展していきます。このまま二人で幸せに暮らすのかと思いきや、どんどん男友達も増え、更にはその中の数人と肉体関係も持ち、現代でいう「ビッチ」に成長してしまうヒロインの姿に驚きました。それでもお互いを必要とする二人の姿を見て、恋愛が理屈じゃないのは今も昔も変わらないなと思います。
英語やダンスの教室など、当時の時代背景も新鮮で、想像するだけで楽しくなります。
実写化するなら、主人公は風間俊介さん、ヒロインは菜々緒さん、主題歌はシドか椎名林檎さんのイメージです。
夫婦善哉の別バージョン
織田作之助の著書「夫婦善哉」によく似た風情を感じます。男が女に惚れ、寝起きを共にし、紆余曲折あって一つ所へ落ち着くプロセスは、昔ながらの説話を読んでいるようです。表題は痴人とありますが、至って現実に当時よくあった夫婦の形を、ごく自然に描いた作品だと思っています。
男は結局美しい女に振り回されたいのだろうと思わせられる
真面目で平凡な男が一人の美しい少女との出会いによって破滅していく様は、愚かでありながらどこか幸福にも思える。
大切なのは外見でなく内面とよく言うが、美しい容姿と肉体に抗うことはできず、ただ平伏すのみなのだと思わされる。
真面目なサラリーマンが見初めて育てた少女を妻にしたが・・・。
男たちはどうしてこうも女性の体に群がるのか。なんてことを考えながら、どんどん読み進められる作品です。