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生きものの記録に関するランキングと感想・評価

生きものの記録

引用元: Amazon

最高評価

60.6

(2人の評価)

黒澤明監督の映画ランキング」で最も高い評価を得ています。

生きものの記録の詳細情報

制作年1955年
上映時間103分
監督黒澤明
脚本橋本忍、小國英雄、黒澤明
メインキャスト三船敏郎(中島喜一)、志村喬(原田)、千秋実(中島二郎)、清水将夫(山崎隆雄)、三好栄子(中島とよ)ほか
制作本木荘二郎
主題歌・挿入歌-
公式サイト-
参考価格400円(税込)

生きものの記録がランクインしているランキング

感想・評価

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面白い邦画ランキングでの感想・評価

黒澤明が描く放射能への恐怖

 黒澤明監督が『七人の侍』に続いて撮ったのがこの映画。
 繰り返される水爆実験に恐れを抱いた老人が、一家ごとブラジルへ移住しようとしますが、家族は猛反対。しかし、老人の放射能への恐怖はどんどん肥大化してゆくことに。
 この映画が製作されたのは1955年。前年3月1日、南太平洋のビキニ環礁でアメリカが行った水爆実験によって近海を航行していた日本の漁船が死の灰を浴び、乗務員1名が半年後に死亡しました。遠い場所で行われていた水爆実験が、被爆国日本にも忍び寄ってきたのです。
 その恐怖を黒澤明の作品で音楽を担当してきた早坂文雄は、「こう生命を脅かされちゃ仕事は出来ないね」と語ったといいます。その言葉に反応して、黒澤は『生きものの記録』を作ることを思い立ったのです。

 黒澤映画は、いつもダイナミックに観客に迫ってきます。雨は普通よりも激しく、血はおそろしく噴出し、槍は無数に飛んできます。その過剰さこそが黒澤映画の面白さです。
 今回も、主人公の老人の恐怖はいっそう激しく表現されます。最初は新聞などを読んで気を揉む程度なのですが、恐怖が蓄積され、遂にじっとしていられなくなります。そうなると、もう暴走機関車のようです。脇目も振らずに自分が信じる正義に沿って行動するのみです。とどまるところを知らない狂気の世界に突き進んでいきます。

 しかし、最後まで観ると、狂っているのは老人なのか、それとも自分たちなのか、と自問したくなります。公開当時は、この映画自体が主人公と同じく、世間からの理解を得ることが出来ませんでした。ですが、原発事故を経験した現代に生きる私たちの視点で観ると、主人公の行動はとても身近に見えてくるはずです。

 主人公の老人を、当時35歳の三船敏郎が演じています。当時としても異例の老け役なのですが、実年齢の老人をキャスティングするのではなく、若く体力にあふれた三船をメイクで老けさせてしまうことで、エネルギッシュに猪突猛進する老人像を描くことが可能になりました。
 こうした映画ならではのウソが、地味なホームドラマを、とてつもなくパワフルな映画へと変貌させています。

吉田 伊知郎

映画評論家

吉田 伊知郎さん (男性・40代)

1位(100点)の評価

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